美雪-6
「会ったら直ぐラブホテルに行ってやりまくるんだ」
「馬鹿」
「俺はそういう付き合いしか知らないんだ」
「お母さんに言ってやろう」
「いいよ」
「いいの?」
「ホテルに行って何すると思ってんだ」
「そんなこと決まってんじゃない」
「何考えてんだ。二人で勉強するんだ」
「何の?」
「英語とか古文とか、いろいろあるだろ」
「嘘。誰がそんなこと信じるもんですか」
「本当だ。ファット・イズ・ディス、ディス・イズ・プッシーとかな」
「それじゃ古文は?」
「我、成り成りて成り余りたる所ひと所あり」
「何それ?」
「男がそう言うと女はこう言うんだ。我成り成りて成り足らざる所ひと所ありってな」
「ウー」
「何唸ってるんだよ」
「許せない」
「何力んでるんだよ。俺の腕にお前の爪が食い込んでるよ」
「お兄ちゃんがそんなことやってるなんて許せない」
「何で? お前もやりたいのか? やりたければ好きにしろ。俺は文句なんか言わない」
「私もやりたいなんて言ってない」
「それじゃ人のことは放っておけ」
「人のことなら放っておくけど、お兄ちゃんのことじゃないの」
「だから俺のことは放っておいてくれ」
「放っておけないよ」
「何で? お前に関係無いだろ」
「関係あるよ」
「どうして?」
「どうして? 私のお兄ちゃんなんだよ」
「だから?」
「だから? 私のお兄ちゃんがそんなことしてるなんて放っておける訳無いでしょ」
「お節介だな、お前は」
「呆れた。そういう問題じゃないでしょ?」
「どっちにしてもお前に関係無いことだ」
「馬鹿」
「何が馬鹿なんだ」
「お兄ちゃんって、呆れた馬鹿だ」
「お前ひょっとして更年期障害なんじゃないのか? やたらに腹を立ててるな」
「生理が来てないと言ったかと思ったら今度は更年期障害だなんて、お兄ちゃんは女の体のこと何にも知らないんだね」
「冗談だよ」
「本当に冗談で言った?」
「しょうがない、誰か紹介してやるか」
「えっ? 本当?」
「ああ、放っておくとうるさくてしょうがない」
「それじゃ今までのことお母さんには黙っていてあげる」
「当たり前だ。それだけで足りるか。男を紹介するんだからな」
「じゃ何をすればいいの?」
「借金をチャラにしろ」
「え? 7000円だよ」
「7000円だって安いだろ。お前結婚紹介所なんていくら取ると思ってんだ。1人紹介して貰うと何十万も払わされるんだぞ」
「本当?」
「本当さ」
「そんなに高いの?」
「そうさ。7000円なんてゴミみたいなもんだ」
「それじゃ半分チャラにしてあげる」
「しっかりしてんな、お前」
「それで誰紹介してくれんの?」
「まあ、考えとく」
「お兄ちゃんよりいい男ね」
「馬鹿。俺よりいい男なんているか」
「それじゃお兄ちゃんと同じくらいいい男」
「まあ何とか探してやる」