美雪-19
「ねえ、お兄ちゃん」
「何だ」
「私相談したいことがあるの」
「何だ」
「何? 手相を見るの?」
「何で俺が手相を見るんだよ」
「手を出すから」
「相談料をよこせと言ったんだ」
「呆れた」
「まあとにかく相談という奴を聞いてやる」
「柳田さんのことなんだけど」
「それがどうした。気に入らなくなったのか」
「そうじゃないけど」
「なら何だ」
「柳田さんが大人の付き合いを望むようになったの」
「大人の付き合いって?」
「だからホテルに行きたがるの」
「ホテル?」
「うん」
「それで行ったのか?」
「まだ行ってない」
「まだ?」
「このままだと行くことになるかも知れない」
「それで俺に何を相談したいんだ」
「もっと今のまま付き合って行きたいんだけど、そういうのって男の子は我慢出来ないもんなの?」
「さあなあ」
「お兄ちゃんの場合はどうなの?」
「俺の場合はどうでもいい。今はお前の場合を話しているんだろ」
「だから普通はどういうもんなのかと思って」
「そういうのに普通とか普通でないとかいうのは関係無いんだ」
「それで私どうしたらいいの?」
「ホテルに行きたくないのか」
「行きたい気持ちも少しはあるし、行ってはいけないという気持ちもあるし、だから悩んでいるの」
「それはな、高校生がそんなことをするのはまだ早い」
「でしょう?」
「俺から柳田に言っておく」
「何て?」
「あいつは性病を持っているからヤバイぞって」
「馬鹿」
「やりたくないんだろ?」
「もう少し上手い言い方して頂戴よ」
「それじゃ、あいつはガバガバだからやっても面白く無いって言うか」
「もっと真面目に」
「そうだな。俺が手を付けたと思われたらいけないな」
「馬鹿」
「まあ上手いこと言っておくわ」
「柳田さんの気分を害さないように上手に言ってね」
「お前あいつが好きなのか」
「好きでなかったら悩まないよ」
「そうだな」
「だから真面目にお願いね」
「分かった」