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「史乃」〜それから〜
【父娘相姦 官能小説】

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第三話-5

 「──全く……。手掛かりさえ、ないなんて。」

 黄昏時を迎え、街を形成する建物や道路に至るまでが燃えるような紅一色に染まり、休日を街で過ごした多くの人々の中にあって、真田寿明は一人、異質な存在感を放っていた。
 往来する人々が、一様に豊かな表情で溢れている中にあって、悲壮感と焦燥感の入り混じった形相で街を彷徨うさまは、帰巣本能が働きながらも、途切れた記憶で徘徊する痴呆老人を思わせる。
 東西に七キロ、南北十キロにおよぶ街中に、史乃のような若い女性が好んで立ち寄りそうな大型商業施設は全部で十余り。それを一つ々、しらみ潰しに探したが、全て不首尾に終わったのだ。

 (とにかく……。明日は……。)

 明日からの予定を考えている途中で、寿明の身体に異変が起こる。夕日に輝く周りの景色が、一瞬にして真っ暗に変わった。

 「な、何だ!?」

 そう言い掛けた次の途端、寿明は頭の中がぐるぐると回る感覚に襲われ、次の瞬間、身体はバランスを失って、そのまま歩道に倒れ込んでしまった。
 周りに人だかりが築かれる。誰かが救急車を呼んだのか、サイレン音が響き渡り、辺りは騒然となった。

 「ああ……。史乃。何処にいるんだ。」

 寿明は薄れゆく意識の中で、娘の名を何度も呼んでいた。


 どれ程の時間が経過したのだろう──。目覚めた寿明の心中に、強い不安感が広がってゆく。目にする光景はどれも初めてで、今、自分が何処にいるのかさえ判然としない。

 (白い天井に長方形の照明とは、やけに殺風景だな……。)

 辺りに目を配ると、自分が淡いブルーのカーテンに仕切られただけの狭い場所で、ベッドに寝かされている事が判った。

 (病院の処置室か……。)

 左腕の静脈に施された置針を通じて、点滴パックの薬が一定のリズムを刻んで滴下される様子が見えた。
 パックの残量が半分程なところから逆算すると、処置されて一時間程度、倒れて二時間ほど経過したあたりかと寿明は思った。

 (どうやら、街中で倒れてしまい、ご親切な方が救急車を呼んで下さったんだな。)

 考えるまでもなく、原因はいくつも思い浮かぶ。
 先ず、昨夜から一睡もしていないこと。次に、飲食を忘れていたこと。そして、長時間に渡って強い緊張状態を課したこと。
 これだけ有れば、途中で行き倒れるのも無理はなかった。

 (取り敢えず病院を出たら、先ず、帰宅して食事に風呂、睡眠をきちんと取って、明日から山本君と合流してすぐに事に当たれるよう、体調を整えておかないと。)

 寿明は、傍らのナース・コールを押し、意識が戻った事を知らせた。
 しばらく経って診察室に呼ばれると、医師に診断結果を告げられたが、病名は中度の低血糖症で、意識混濁状態にあった為に薬の経口投与がかなわず、代わりに、点滴に血糖値を上げる薬を混ぜる事で処置したという。
 又、治療方針に当たっては糖尿病等の生活習慣病の有無が重要となる為、その辺りを判別する検査も行ったらしく、結論としては、今日は帰宅してもらって構わないが、近々に、年齢を考慮した人間ドッグで詳細な検査を受けるべきだと締め括られた。


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