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「史乃」〜それから〜
【父娘相姦 官能小説】

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第三話-2

 「判りました。では、打ち合わせは二日延期して、その間に、お嬢さんの問題を解決させるべく、私も動いてみます。」
 「すまない。こんな事で君の手を煩わせて。」
 「いえ。それで誠に僭越なのですが、更にお伺い致したい事が……。」

 山本は、自分が行動する為の準備として、寿明が知りうる限りの情報を訊き出そうとした。
 通常、打ち合わせという業務の日程変更を行う場合、上司への事前承諾を必要とし、山本のように承諾さえ得ずに日程を変える事は越権行為と見なされるのだが、彼女はこの事態を、承諾せざるを得ないのだと踏んでいた。
 作品は生き物であり、作品に心血を注いで面白く作り上げるこそ、作家たる所以である。その作家が作品に集中出来ない状態では、満足な作品は出来ないという思いがあった。
 作品の為なら上司に抗う事も厭わないのが、山本江梨子の信条だった──。

 「これで、二日間の猶予は貰えたな。」

 山本に連絡した事で、寿明の顔に多少の生気が戻ってくる。彼のように作家として以外、実社会と深くコミットしていない人間にとって、山本は、百万の援軍に等しい存在に思えた。

 「──それにしても、何処に行ったんだ。」

 寿明の脳裡に、昨夜の出来事が映る──。裸の史乃が目の前で跪き、自分の一物を握りしめた瞬間、口で拒みながらも本音は、このまま成り行きで人道を外れてもいいと覚悟した。
 だから、寸前で突き飛ばした時も、口では良心の呵責を唱えていたが、そんなものは誤魔化しでしかなく、事実は大きく口唇を開き、今まさに一物を咥え込もうと屈み込んだ史乃の妖艶なる眼の輝きを見て、急に恐ろしくなったのだ。

 お父さんは、妄想の中で私とこうなりたいと思いながら、一人でしてたのよね──。

 実の娘である自分に欲情する父親だという事実を知りながら、後の八ヶ月間を、平然と一つ屋根の下で暮らして来たと悟った時。そして、今も寿明の中に存在する綾乃を消し去った後、自分がその替わりをしたいとする企みを知り、強い衝撃を受けたのだ。
 色香漂わせる史乃の裸体に目が触れ、妄想とは掛け離れた様相に、寿明は、努めて平静を装っていたが、その実、中身は狼狽えていた。
 夢の中では、常に史乃をいたぶり、凌辱し、支配下に置こうとする傾向にあった自分が、実際の史乃が見せた積極さに触れた瞬間、寿明は蛇に睨まれた蛙のように、自分が「やがて若い身体に溺れてしまう。」恐怖を察知し、回避しようと突き飛ばしたのである。

 (本人は、自分の中にある業の深さに気づいてないだろう。しかし……。)

 仮に戻って来たとしても、今まで通りの親子関係は望むべくもない。お互いが相手の想いを知った以上、人外なる関係に陥るのは時間の問題だと思えるのだ。
 そうならない為には、親子関係を演じ続けるしかないのだ。

 (果たして、そんな事が可能だろうか?)

 寿明は自問自答する──。もし、失敗すれば、史乃という綾乃との間に生まれた唯一の愛の証さえ、失ってしまいかねない。

 (やるしかないだろう……。元はと言えば、作家になろうとした事が、元凶のようなものだから。)

 あの時点で夢を諦めていたら、一般的な父親と娘の関係を続けていただろうし、綾乃も、女手一つで苦労を背負い込む事なく、今も生きていた筈だと寿明は思った。

 「──このまま、待ってても埒が明かないな。取り敢えず、街に出てみるか。」

 寿明は、朝食を摂る余裕も無いまま、自宅を出て街に向かった。
 宛てがある訳ではない。昨日、友人達と遊びに出掛けたという事実を唯一の手掛かりに、出向かずにいられなかった。





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