第二話-9
「──あっ、何か垂れてきた。」
陰茎の先、亀頭の鈴口から先汁が溢れて伝い流れる。しごき上げる度に、にちゃにちゃという音が耳に届き、二人の興奮度を更に昂らせた。
「……使ってよ、お父さん。」
心では拒否しながら、娘が齎す快感に身を任せる寿明は、史乃の言ってる意味が判らなかった。
「な、何だって?何を……。使うんだ。」
「だから、私をお母さんの代わりに……。使ってよ。」
「何を……。何を言ってるんだ!お前は……。」
「私、本気よ。お父さんとだったら。」
史乃は、そう言うと、口唇を大きく開けて舌を出し、先汁にまみれた陰茎を咥え込もうと近づいた。
その舌が亀頭に触れようとした瞬間、寿明は史乃を突き飛ばしていた。
「お、お父さん!?」
思いもしない出来事に、史乃は茫然自失の状態で寿明の方を見た。
寿明は、そそくさと身なりを整えると、脱ぎ捨てた服を拾い集め、史乃に手渡した。
「すまない。怪我はないか?」
「どうして?」
史乃の問い掛けに、寿明は苦い顔をした。
「お前と、そんな関係になることを、綾乃は望んでいるだろうか?」
寿明の言葉に、史乃は不服そうな顔を見せる。
「──最初から拒否しなかった私の責任だ。
二人で暮らす内に、私はお前の中に綾乃を投影するようになってしまった。」
「そんな……。」
「生活する中で、史乃の裸を何度も見る内に、どんどん妄想は膨らんでいったんだ。
実の娘に欲情するなんて、私は親として失格なんだよ。」
寿明の胸の内を聞かされた史乃は、強い蟠りを抱いた。
「ずるいよ、お父さん。」
「史乃……。」
「自分だけ納得して、お母さんを出して来て忘れようなんて。私の気持ちは、何処に持っていけばいいのよ!?」
史乃の目から涙が溢れる。両手で服をかき集めると、そのままリビングを出ていった。
一人、取り残された寿明。史乃の消えた辺りを見つめながら、娘を傷付けた自分の行動を悔いた。
(綾乃。これで、良かったんだよな?)
かつての妻に思いを馳せても、答えは無かった。
翌朝──。なかなか起きて来ない娘を心配して寿明が部屋に入って見ると、史乃の姿は無かった。
そして、その日以降、史乃は忽然と寿明の前から消えてしまった。
「史乃」〜それから〜 第二話
第二章歯痒い想い 完