第二話-7
(あんなになるって、お父さん……。)
激しい戦慄に見舞われた史乃は、無意識に身体が打ち震えた。
史乃は、冷静になろうと努めるが、陰茎の残像が頭から離れず、動揺はなかなか静まってくれない。
(まさか、史乃に見られてしまうとは……。)
一方、自室に逃げ込んだ寿明は、立ちつくしたまま頭を抱えていた。
単に陰茎を見られるだけなら未だしも、勃起した物を見られるとは、後悔してもしきれない。それ程、自分の行いを恥じていた。
「──とはいえ、このままでは関係が拗れてしまう可能性だってある。」
取り敢えず、ここに隠ってても埒が明かない。事態を変える為には、謝って釈明の機会を得る必要がある。
「仕方がない。行くか。」
ようやく冷静さを取り戻した寿明は、意を決して再び史乃のいるリビングに向かった。
「史乃。話を聞いてくれ。」
リビングに現れた寿明の表情は強張っていた。
一方の史乃も、頬を紅潮させ、視線を合わせること無く俯き加減のまま、寿明の方を向いてる。
二人の間に気まずい空気が流れる中、先に口を開いたのは、意外にも史乃だった。
「お父さん。私のせいで、そうなったの?」
即物的な問い掛け──。寿明は、しばし間を置いて考える。彼是とご託を並べて釈明しようが、娘に欲情した事実は消せるものではない。
「ああ。ストレッチの時にくっつかれて……。気持ち良くて、つい。」
「実の娘なのに?」
非情とも取れる訊問は、寿明の心を抉るように傷付けた。
「その……。例え娘であっても魅力的な女性なら、男は、こうなってしまうんじゃないかな。」
それでも寿明は、自らの想いを一般論として答える。その表情は、まるで信者が教会で懺悔でもしているように固かった。
その時、史乃はとんでもない言葉を吐いた──。
「ねえ、お父さん。もう一度、見せてよ。」
そう言うと、立ちつくす寿明の前に跪き、徐に、パジャマのズボンに手を掛けた。
「や、辞めなさい!気でも狂ったのか。」
必死に抵抗する寿明を、史乃は上目遣いに見て問い掛ける。
「どうして?一度は見せてしまったのに、どうして駄目なの。」
「そ……。そう言ったことは、恋人同士でやるものだろう。」
「あら?お父さんは、恋人でもない娘にこんな風になるのに、私が恋人とこんな事をするのを、許してくれるの?」
「それは……。」
ぐうの音も出ないとはこの事だ。
自分の異常さを娘に指摘され、寿明は、とうとう禁断の一言を吐いてしまう。
「──じゃあ、史乃はどうなんだ?私に裸になれと言われて、なれるのか?」
寿明は、自分の発言を後悔した。史乃は、二の足を踏むことも無く、
「いいわよ。私は、お父さんに見られたって、恥ずかしくないから。」
服を脱ぎ捨て、一糸纏わぬ姿になったのだ。
寿明は目前に現れた裸体から、目が離せなくなった。
色白で、きめ細かな肌は見るからに艶があり、大きく隆起した乳房の張り、腰のくびれから太腿に掛けては若さに溢れて、秘裂を覆う恥毛は濃く、匂い立つ程の色気を醸していた。