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ニカイノカノジョ・サンカイノカレシ
【OL/お姉さん 官能小説】

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ゴカイノカイギシツ-1

「あー、やだやだ。煙草が不味くなる」

 田中課長にまとわりつくように、1階の佐瀬さんが喫煙所から出ていくと、4階の相川姐さんが思いっきり顔をしかめた。

「相変わらずすごいパワーだな、彼女」

 つい最近までターゲットとしてロックオンされていた寺島係長も苦笑い。

「サセコの次のターゲットは3階の田中課長か」

「うわぁ、災難」

「女子だけの時はうっとおしいくらい“ダンナとラブラブなんです”アピールするのにね」

 そんなやりとりをぼんやりと聞いていた。なんか発言したらボロがでそうだ。

「田中課長落ちるかな?」

「可愛い若いコ好きですもんねー」

ーあぁ、田中課長って周りからはそういうイメージで見られてるんだ。

「でも同棲してるっぽくない?先月残業したときに、田中課長、ここで電話しててさ。普段より相当優しい声で話してた内容が、なんかそんな感じだったんだよねー」

「最近見ないけど、よく女子とも飲みに行ってたもんね。まぁ複数だったけど」

「ここ1年くらいは忙しくてそれどころじゃなさそうだけどね」

ー同棲、か。

 新しい派遣さんがようやく定着してくれて、そこまで残業しなくてもすむようになってからも、週の大半は自分の部屋ではなく課長の部屋に帰っている。たぶん、相川姐さんが言ってた電話の相手は私だ。

「午後からの会議、ハルカちゃんも出るんだよね」

 3階の木原さんが話の流れをぶったぎってくれて、ちょっとホッとした。

「はい。一応実務者として」

「一応じゃなくてオレより精通してるじゃん。フォローよろしくね」

 一緒に出席する寺島係長もこっちの会話に乗ってくれた。

「ここにいるメンツ、ほとんど出席?」

「アタシも。そういえば1階の実務者はサセコだって」

「えー。谷川さんじゃないの?」

「谷ちゃんは産休入っちゃうからじゃない?」

 話題が変わったのと、吸い終わったのを機に退出した。エレベーターホールの前に立つと階段から嬌声が聞こえる。視線を向けたら、うんざりと言った顔の田中課長と目があった。課長の腕に自分の腕を絡ませ、豊満な胸を押し付けている佐瀬さんはこちらに気づいていないようで、なおも何かアピールしている。
 何か言いたげな課長から目をそらし、エレベーターに乗り込んだ。





 支社内の会議に2階の一般社員が出席するのはまれ。少し遅れて戻ってきた寺島係長と、所長と課長と打ち合わせをして、始まる10分前には5階の会議室に向かった。佐瀬さんはやはり田中課長にまとわりついている。後から入ってきた相川姐さんと目が合うと、その様子を見て思いっきり顔をしかめてきたので、寺島係長と2人でつい笑ってしまった。

「ほんと凄いな、彼女」

「寺島係長はどうやって乗り切ったんですか?」

 指定された席について、小声で話し合う。

「支社は違うけど嫁も社内の人間だから、ほんとに勘弁してって」

 奥様は私の指導係だったミチルさんで、単身赴任が気の毒なほど仲がいいご夫婦。

「それですんなり?」

「いや、かなりしつこかったけど。田中課長は独身だから、相当苦労するんじゃない?」

 ふと視線を感じてそちらの方向を向くと、ようやく佐瀬さんに解放された田中課長と目があう。こちらの会話の内容までは聞こえていないだろうけど、何だか険しい顔をしていたのが気になった。

 田中課長の司会進行で会議が始まった。よく通る声。課長の声が好き。あまり見たことがないその姿と、会議資料を交互に眺めながら、時々資料にペンを走らせる。

「ありがとう。ところでこの資料作成者は寺島係長?稲生さん?」

 2階の説明と質疑応答を寺島係長がそつなくこなしたところで、支社長から尋ねられた。

「作成者は稲生ですが、何か不備がございましたか?」

 応える寺島係長にも私にも緊張が走る。

「いやいや、よく出来てますよ。分かりやすくていい資料だったからね。寺島係長の説明もよかったです」

「ありがとうございます」

 2人で頭を下げ、顔を見合せる。よかったと頷きあってもう一度顔を上げると、また田中課長と目があった。優しい笑顔で頷いてくれて、小さく頭を下げて返す。

「では、次の会議は来週の同じ時間で。お疲れ様でした」

 1階の説明の時に、佐瀬さんの発言で若干空気が乱れたけれど、それ以外は何事もなく1回目の会議は田中課長が締めて終了した。空気を乱したことなどおかまいなく、直属の上司が苦虫噛み潰した顔をしていても気にすることなく、佐瀬さんが田中課長に突進していくのを横目で見ながら会議室を後にした。




「稲生さぁーん」

 定時後すぐの7階喫煙所。残業前に一服、と思ったのが間違いだったらしい。佐瀬さんの姿を見つけてこっそりUターンしようと思ったのだが、あっさり捕まってしまった。部署は違えど相手は先輩だし、無下にもできない。

「お疲れ様です」

「おつかれちゃーん。会議すごかったねぇ。よかったね、支社長に誉められて」

 この人にそう言われても素直に喜べないのは何故だろう。

「所長や課長にかなり手直ししていただきましたから」

「またまたぁ。稲生さんが会議室出たあとも支社長誉めてたよぉ?」

「ありがとうございます」

「でねー、今日田中課長と飲みに行くんだけどぉ、稲生さんもどぉ?」

「私はまだ仕事が残ってますので、残念ですけど」

ー全然残念と思ってないこと、顔に出てなきゃいいのだけれど。

「そっかぁ。田中課長に誰か他に連れてくるんだったらいいよって言われたんだよねぇ。課長、稲生さんのことお気に入りみたいだからぁ、喜ぶと思ったんだけどなぁ」


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