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俺は他人棒
【熟女/人妻 官能小説】

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森崎智美(38)-1

「今晩のおかず、何にしよう……」
「俺は決まってますよ」
「えっ、何?」
「あなたです」

 俺、寿亮介は、世間的に見ればしがないフリーターでしかない。だが当の本人は相当楽しく人生を謳歌しているつもりだ。地位なし。ルックスそこそこ。貯金は少し。不安定な生活ながら、今を楽しまずして何の意味がある、という享楽至上の精神があるから、就職してどこかの組織に縛られるのは御免だ。
 ちゃらんぽらんに見える俺だが、人生哲学はきちんと持っている。名づけて「俺三原則」というその法則(?)は、大学中退後フリーター暮らしになって足かけ五年、ぶれていない。
 その一、楽しいことを優先するべし。これは先に述べた通り。苦しい向こうにそれを上回る楽しいことがあるなら、敢えてその道を選ぶのも厭わない。
 その二、金は回るものと思うべし。何だかんだ使ってもどうにかなるもので、博打に近い投資でも俺はやってしまうことにしている。そこで失っても、案外、他の思わぬところから転がり込んでくるのが金というやつなのだ。
 その三、女は人妻に限る!
 主に俺が金を使うところといえば酒と遊びなのだが、その遊びというのは、人妻とのエロ事三昧に比重が置かれている。とにかく人妻最高。とりわけアラフォー妻の味ときたら、覚えてしまったが最後、若い娘なんか食えたもんじゃなくなる。
 かく言う俺も若者の端くれ、二十五歳ではあるが、遊び相手は平均四十三歳。熟れて拓かれた身体がたまらない淫ら妻たちばかりなのだ。
 家賃四万三千円のアパートに一人暮らし、普段の生活は慎ましく、簡単な手料理に缶ビールでもつければ幸せという俺と、夕飯の話題で盛り上がっているのは、目下狙っているターゲットである森崎智美、三十八歳。バイト先の洋菓子屋で新人研修中の主婦だ。

 掛け持ちでいくつかバイトをしている俺だが、この洋菓子屋が一番長く勤めているところで、かれこれ三年。入れ替わりが激しいスタッフの中で、いつしか古株の部類に入っており、ほとんどの仕事は出来るため、新人が入れば教育役を任されるほどだ。
 信頼してくれている店長には悪いが、さほど真面目なスタッフではない俺だ。長く続いているのも、オシャレ系な店のせいかスタッフにも客にもそそる美人奥様がいっぱい。恰好の狩り場となるためだ。上手く立ち回っているおかげで、素晴らしい獲物の山の中に抜き身をぶら下げて留まっていられる立場は、まさしく極楽。
 気さくなお調子者と思われている俺だから、眼をつけた相手には、少しずつ下ネタ混じりのジョークを投げかけて反応を窺う。押せそうかどうか、見極めるのには場数がものを言う。処女相手だったらこうは行かないだろう、と思うほど、人妻は乗ってくるものである。反応次第で、だんだんエスカレートさせて、いつの間にかキスまで漕ぎつけ、下のお口も頂きます……案外これが成功率高めなのだから、ニッポンの貞節たるや墜ちたものである。
 研修中といっても森崎智美はひと月経過で、だいぶ打ち解けていた。もうそろそろ名札から研修の字は取れる頃だろう、商品名や価格も頭に入って、レジを任せて問題ないレベルとなっていた。上がり時間が同じだったので、お茶に誘ったら二つ返事でオーケーされ、近場のカフェで向かい合っていた。
 一ヶ月目ともなると、職場に対する疑問点や、人間関係のことなどで吐き出したいことも溜まってくる頃合いだ。入ってきた当初から馴染んでいる俺には色々と話しやすいと見え、智美は相談などを持ちかけてきた。
 表面にありありと出しはしないものの、下心たっぷりの俺は、智美に去って貰いたくはない。ヤリたい気持ちから、相談に乗ってアドバイスなども熱心にしてやった。
 差し向かいで話していると、心置きなく智美の顔を見ることが出来た。
 薄めの顔立ちと言おうか、瞼は一重で眼は細い。筋の通った鼻はツンと上向き加減で、キツネ系の印象である。同じくちよっと上反りの唇がたまらなく色っぽい。スレンダーな身体を抱きしめて、この唇をチュッチュと吸いまくったら、特徴的なハスキーボイスでどんな風に喘ぐのだろう。
 旦那との間に子供はいないそうで、バイトは小遣い稼ぎのようなものらしい。出来ればそこそこ稼ぎたいので、もっと仕事を覚えて時給アップも目指したい──という話の感じでは、辞める気はなさそうである。

 俺は親切面して話を聞き、ためになるかどうか怪しいアドバイスなどを加え、協力的な先輩っぽく振る舞った。それでも彼女は満足したらしく、後は他愛もない雑談。俺がささやかながら自炊していると言ったのがきっかけで、冒頭のおかず談義となった訳だ。
 ごく最初のうちから、端正な美貌としなやかなボディラインに賛辞を送り続けて、出勤するたび「今日も綺麗っすね」などと軽口を叩いていた。セクハラと受け取られるか諸刃の剣となる発言にも、智美は悪い気を起こさないようなので、思い切ってモロ下品なことを言ってみたのだが、
「やだぁ、何それ。あたしみたいなおばさん、おかずにならないでしょお」
 笑いながら突っ込みを入れてくれたので、俺は調子づいた。
「おばさん? 誰が?」
「あたしよ。もうすぐ四十の立派なおばさんでしょ」
「思わないなあ。お姉さんって呼んだほうがいい若々しさじゃないですか。あと十年経っても、おかずになると思いますよ森崎さんは」
「えー、もしかして寿くん、熟女好きなの?」


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