文香-6
「今持ってる服や下着は全部捨てちまえ」
「えーっ」
「えーっじゃない。黙って言われた通りにすればいいんだ」
「はい」
「そうだ。そういう返事も出来るんじゃないか」
「うん」
「分かったな?」
「パンツのこと?」
「それと服のこと」
「はい」
「今度俺と会う時に金を持ってこい。それでお前が着たら似合いそうな服を選んで買ってやる。下着もだ」
「うん。それでそれを着るの?」
「当たり前だ。着なきゃ何の為に買うんだ」
「竜ちゃんと会う時に着るのね」
「違う。俺と会う時は勿論だけど、普段からそういう服を着るんだ」
「うーん」
「厭なのか?」
「厭じゃないけど母さんが何て言うかな」
「お前親の言うことなんか全然聞かないんだろ。結構突っ張ってるって評判だぞ」
「そうだけど」
「だったらそんなこと気にする必要なんか無いじゃないか」
「うん」
「そうだろ。それから少し痩せたら髪を赤く染めて化粧も派手にしろ」
「えーっ」
「いちいち驚くなよ」
「うん」
「うんじゃない、返事ははいだ」
「はい」
「俺はお前を少しでも綺麗にしてやろうと思ってんだ。俺だってブスと一緒に歩きたくは無いからな」
「竜ちゃん私のこと好き?」
「好きでなきゃ俺は抱いたりしない。だけど俺の言う通りにすればもっと好きになる」
「じゃ何でも言う通りにする」
「そうすると大好きになるだろう」
「嬉しい」
「この服見て母さんが目を丸くしてた」
「何か言ってたか」
「言いたそうだったけど、何も言わなかった」
「金は持ってきたか」
「少しだけど」
「いくら」
「10万円」
「10万円は少しじゃない。人にばらまけばあっという間に無くなっちゃうだろうが、買い物に使うんだったら結構買えるんだ」
「どんな服買うの?」
「そうだな。腹が出る服を買おう。そのお肉をみんなに見せてやろう」
「えー、恥ずかしいよぉ」
「恥ずかしかったらダイエットしろ。隠してるから平気でブクブク太るんだ」
「お願い、1週間待って」
「どうして?」
「1週間で痩せるから」
「無理するな。お前の腹はそんなに出て無いよ。恥ずかしい程出てたらそんな服着せて俺が一緒に歩いたりするかよ」
「本当? 出て無い?」
「前屈みになると腹の肉がたるむから背筋を伸ばして歩くんだ。そうすればみっともない程では無い」
「竜ちゃんと付き合ってると何だか私眩暈がするみたい」
「何で?」
「だって人の視線が痛い程突き刺さってくるんだもん」
「お前今まで人の注目集めたくて群がってくる奴らに金ばらまいてたんだろ。そんなことしなくても人の注目浴びることは出来るんだって分かっただろ」
「うん。そうなんだね」
「あのマネキン人形が着ている服にしよう」
「えー。あんなのー?」
「何か不服か?」
「だってあれ・・・」
「何?」
「私恥ずかしくてうんち洩らしそう」