A-11
翌朝──。俺は、けたたましいチャイムによって目覚めた。
「だ、誰だよ……。こんな朝っぱらから。」
長岡はチャイムに気付くことなく、傍でまだ寝息を立てている。
時計に目を向けると、六時十分を示していた。が、チャイムは一向に鳴り止まない。
(くそ!いい加減にしろよ。)
俺は部屋着を身に纏い、玄関へと向かった。
「はい、はい!今、開けますから。」
ドアの施錠を解除し、ドアを解放した途端、誰かが飛び込んで来て、俺に抱きついた。
「おっはよー和哉ちゃん!ちゃんと生きてた!?」
「ね、姉さん!」
なんと、亜紀が帰って来たのだ。
「──な、なんでこんな朝っぱらから?」
「あんたの驚く顔が見たかったからよ。」
何と言うバット・タイミング。昔から俺をからかう事を信条としていた亜紀らしい登場だ。
「んっ?」
亜紀の後ろに、小さな影が見える。見たところ、まだ三〜四歳の子供だ。
「ね、姉さん。その子は?」
「ああ、この子ね。」
亜紀は、子供を俺に見えるよう、自分の前に置くと、何やら企みのある表情になった。
「私の子よ。和巳って言うの。」
「えっ?ちょっと、か、和巳って、まさか……。」
「可愛いでしょ!もうすぐ三歳になるのよ!」
ちょっと待て、もうすぐ三歳だとしたら、あの時のじゃないのか?
「ね、姉さん。もしかして、この子の父親って……?」
俺の狼狽えぶりを見て、亜紀は、急に真剣な目をこちらに向けた。
「だったらどうする?覚悟を決めて全てを捨てるの?」
既に、眠気なんぞ何処に吹き飛び、このシチュエーションが嘘であって欲しいと、俺は願っていた。
「Overtake goodbye」A再会 完