闇-1
親に捨てられた子供達、親に虐待され居場所を失った子供達、少年院から出て社会復帰を目指す者達が集まる施設NPO法人星空の家、そこでは農作物を作ったり様々な工芸品を作ったり、勉強したりと人としての正しい知識や知恵をつけさせ更正させていく施設だ。
1人部屋に閉じこもり、誰ともコミュニケーションをとろうともせず、ひたすらヌイグルミを創っている少女がいた。
顔には大きな十文字の傷跡があり、人には感情を見せず常に無表情だった。
その少女は木花(もみじ)と名乗った。
木花の創るヌイグルミの数は100を越える、可愛らしさが全くなく、おどろおどろしい・・・
施設の女性従業員が木花の部屋のドアをノックする
『木花ちゃん、入っていいかな?』
『・・・はい・・・』
女性従業員がゆっくり中に入り
『連絡事項があってね』
『・・・何ですか?』
木花は女性従業員に背を向けたままヌイグルミを創っている
『うん、来週のあずさちゃんの誕生日パーティーをやるんだ、それで皆1人ずつプレゼントを渡すことになったの、木花ちゃんも何か考えといて』
『・・・』
木花は軽くうなずき何も話そうともしなかった。
『そ・・・それじゃヨロシクね、いいパーティーにしようね、お邪魔しました』
女性従業員は戸惑いながら木花の部屋から静かに出ていった。
木花はヌイグルミを創りながら・・・
『・・・くだらね』
そしてヌイグルミ創りを途中で止め、1つのヌイグルミを手にしフード付きのコートを着て部屋を出た。
外出をする時は外出届けを書かなくてはならないルールがある
『あらっ木花ちゃん、どこへお出かけ?』
『・・・コンビニ』
木花は受付係には目を合わせず施設を後にした。
ヌイグルミを抱き一点を見つめたまま歩く、すると後ろから3人組の不良高校生が木花に話しかけてきた。
『ねぇ君ぃどこ行くのかなぁハハ』
木花は無視して足を止めない、無視されたことに腹をたてた不良達は木花を囲んだ・・・
『オイ!ガキが無視してんじゃねぇよ!』
3人の不良達は木花を人気のない場所まで連れていく・・・
『オイっコイツ顔にスゲェ傷つけてるぜ・・・』
『しかも気味の悪いヌイグルミ何か持ってやがる』
『靴じゃなくてゾウリって何だよ?大丈夫か?』
木花がヌイグルミに息を吹き掛けた瞬間、ヌイグルミは狂ったように牙を剥き出しにして3人の不良達に襲いかかった。首を噛みちぎり、顔面をグチャグチャにし、辺りが血の海になるまで時間はかからなかった。木花はコートの中に隠していたノコギリを出し、張って逃げようとする1人の不良目掛けてノコギリを振りかざした。
木花はヌイグルミを抱き抱えノコギリをコートの中に戻し、表情を全く変えることなく、その場から消えた。