亜美-11
「どうだった?」
「はあ、驚きました」
「何が驚いた?」
「全部ですね。あんな風に縛られて感じる女性が本当にいるということにも驚いたし、あの凄い量の愛液にも驚きました。自分の奥さんをさらし者にして自由に触らせたりすることにはもっと驚いたし」
「そうか。あの程度で驚いちゃいけないわ。特に自分の奥さんをさらし者にするなんていう点は、もっとずっと酷いのがいくらでもいるんだから。セックスして中に出してやって下さいなんていうのがいくらでもいるわ」
「そうなんですか」
「感じた?」
「はあ、正直言って感じちゃいました」
「そう? 正直で宜しい。感じなかったなんて言ったら虐めてやるところだった」
「はあ?」
「写真の処理は出来る?」
「処理って何ですか?」
「適当にトリミングしたり拡大したりっていうこと」
「ああ、そんなことは簡単です」
「そう。それじゃ社に帰ったらそれやって頂戴。私は原稿書くから」
「はい」
社に戻って撮影した全部の写真をパソコンに取り込み、トリミングと明度調整だけをした。原稿を書き終えた礼子が見せてくれと言うので、サムネイルという、写真で言えばベタ焼きのような小さな画像が沢山並んだ物を画面に出すと、礼子が大ざっぱにおよそ40枚ほどの画像を選んだ。誠司はそれを傍らで番号だけ控え、控えた番号の画像だけを別のフォルダに移動して1枚ずつスライド・ショーの形式で表示した。其処から礼子は更に10枚の画像を選び出した。この10枚を雑誌に載せようというのである。
「性器の所だけボカシを入れたりするの出来る?」
「出来ますよ」
「そう。それは助かるわ。今までは石井君しか出来なかったから彼1人が頼りだったのよ」
「でもこれはUSBに落として印刷所に持ち込むんでしょ?」
「そう」
「だったら印刷所でもそれくらいのことは出来ると思うけど」
「駄目。そんなことしたら印刷所から無修正の写真が流出しちゃうでしょ」
「ああ、なるほどそうですね」
「中田君も無修正の写真を持ち帰って1人で楽しむだけならいいけど、人に売ったり上げたりしたら即刻首だから、覚悟しなさいよ」
「はい」
「本当は社外に持ち出すこと自体が違反なんだけど1人で楽しむだけなら目を瞑って上げるから」
「はあ」
礼子が選んだ画像は、服を着たまま縛った物が1枚、下着姿の物が2枚、全裸の物が7枚で、7枚の内3枚は空中安楽椅子の画像だった。空中安楽椅子が無かったら礼子も記事にする気にはならなかったらしい。開いた股間から愛液が落下していく瞬間がはっきり撮れている物は、我ながら傑作だと思った。これは無修正の奴を自宅に持って帰って自分のパソコンに入れようと思った。下着を穿いたまま股間を締め上げて縛った画像は、良く見ると既に下着に染みが出来ていた。あの時は余程注意して見た筈なのだが、其処までは気が付かなかったのである。この時から奥さんは感じていたんだなと思った。クリトリスを触った瞬間のキャアーという叫びは艶めかしくて耳の奥にはっきりと残っていた。
修正した物を礼子にチェックして貰い、それをUSBに落として2人で印刷所に向かった。