投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

君と僕との狂騒曲
【ショタ 官能小説】

君と僕との狂騒曲の最初へ 君と僕との狂騒曲 29 君と僕との狂騒曲 31 君と僕との狂騒曲の最後へ

君と僕との狂騒曲-30


 キャンプに戻ると、全員が僕を待っていた。

 まず大槻先輩がにこやかにやってきて、僕の肩を抱いた。「よくやった」
「ウオー」全員が飛び跳ねた。「ひーひっひっひい」みんなが歩く僕をひっぱたいてゆく。僕に蹴られたカボチャ頭が、「馬鹿かと思ってたけど、おまえ、凄いな」僕はやつの肩を思いっきりひっぱたいた。大嘘とバッカーノは「なんで俺たちを紹介しないわけ?」と悲しみに沈んでいる。僕は言った。「チャンスってのを逃しちまうと、ほら、こんなゾンビになる。やらない失敗よりやった失敗の方がスマートってことさ」大木先輩は珍しくニコニコして近寄り、僕の太股を片手で握ると、僕を空高く持ち上げた。まあ、彼なりの祝福なんだろうけど。

 気がつくと、僅か一時間で僕はヒーローになっていた。
 僕は目立ちたくないのにね。
               *
 夜に沈んだ丘の一番上にある僕らのテントの外に君は立っていた。

「ケンピ、何してたの?」声は銀河を遮る暗黒星雲から聞こえてくる文明のメッセージ。

「砂で皿を洗うってやりかたを聞かれたんでね、実演指導」

「ふーん。あれ、どこで知ったの」

「なんだっけなあ、どこかの本に書いてあったような気がするんだけど」

 僕は君を横目で見ながら答える。

「でも、ここみたいに長石って言うか、さらさらの砂じゃなきゃ駄目なんだけどね」

 目の前も、右も左も、後まで銀河が広がっている。
 僕らは外宇宙を遊泳してるような気分になる。足下の草地が緩んだみたいだ。

「昼間のケンピにゃビックリしたよ」

「マキの素早い対応が決め手だよ。ところで、あの飲み物の出し方、どこで覚えたんだい?お客様の目線よりやや下に腰を下げるってやりかた」

「ありゃ、銀座のクラブのやり方だってさ。親父が言ってた」

「昼間の僕は面白かったかい?」

「豪華絢爛華麗優美の最上級かな」

「だったら、ご褒美が欲しいな」

 君が僕を振り返るタイミングを逃さずに僕は動いた。二人の頭が交差するように僕らは口唇を合わせた。君の口唇は冷たかったけど、口腔のなかは暖かそうだった。二秒ぐらいそうして居ただろうか。君は僕の肩をゆっくり掴み、僕らの口唇を離した。

「予感はした?」僕は小さな、甘えた声で言った。

「三年間我慢したんだ。少しぐらい甘えさせてよ」

 僕は笑ってふたたび左側の方を向いている君をたぐりよせ、もう一度口唇を重ねた。

 こんどは君が僕に抱かれている。僕が差し込んだ舌は君の舌に巻き付き、あふれた唾液を飲み込んだ。甘くて、素敵な味と香り。ふわりとした君の匂い。
 長いキスから離れると、もっと強く僕は君を抱きしめた。耳の縁をなで、耳たぶをしゃぶって、ほんの少し甘く噛む。君の背中をまさぐり、美しい肩胛骨を確かめる。君の右手を握って、僕の首に巻き付ける。ほんの小さな力だけれど、君も力を返した。


君と僕との狂騒曲の最初へ 君と僕との狂騒曲 29 君と僕との狂騒曲 31 君と僕との狂騒曲の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前