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君と僕との狂騒曲
【ショタ 官能小説】

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君と僕との狂騒曲-16


 ただ、僕の家族は崩壊した。父より多い年収を持つ母親とそれを許せない父、そして妹の非行と不登校。祖母の養老院への逃亡。僕のストレスの厳しい原因となるいくつもの事件が毎日のように勃発していた。僕は父親からの請願を断り、母親の自由を認めた。

 嵐のような生活は徐々に家に帰ることを拒み、僕の心は歪んでいった。僕は煙草を吸うようになり、ウイスキーの魔力と、最低の事だけど、密かにラッカー・シンナーの吸引をするまでに堕落した。

 シンナーをビニール袋に入れて、ビニール袋の中の酸素がなくなるまで激しく吸い込むと、最初にキーーーンという耳鳴りが起こり、それとは逆に外界の音が低く、小さくなる。そのかわり着ている服の衣擦れの音や水道の音が大きく聞こえる。夢想すると、そこにはエーリッヒ・ブラウアーの「誕生」が闇の中に浮かんでいる。惑星の中にいる無数の人々や動物が動いている。畑を耕している人と牛、教会の牧師が誰かに神のことを話しかけている風景。巨大な惑星の手足が捻れて動き出す。

 薬箱のアスピリンや風邪薬を浴びるほど飲んでみたり、やらなくなって久しい煙草の火を胸や腕に刻み始めた。夜を徘徊し、そのまま朝を迎えた。

 考えてみれば、朝食は眠らなかったせいで採らず、昼食は弁当も金もないので食べない。夕食は父親と顔を付き合わせるのが嫌で引きこもり、(父親は隣に座った僕を必ず裏拳で殴りつけた)何も食べていないのにも関わらず、苦い胃液を吐いた。

 しばらくして、僕は「ダイエットって簡単じゃん」と思った。僕は急速にそのくらい痩せ細った。
               *
 事実上家族を失った僕にとって、君と図書館や公園やスカウトハウスに行ったりキャンプの綿密な計画を作ったりするのは、僕にとってかけがえのない幸福な時間になった。

 足で歩く限り、世界はとても広い。自転車でもそう。とても広い。君はハーフドロップの洒落た自転車を持っていたし、僕はドロップハンドルのレーシングに山岳用のタイヤを穿いた、ちょっと自慢のブリジストンに乗っていた。
 君はもちろんの事、学校の終わった昼下がりに同級生と一緒に多摩湖とか狭山湖まで走って帰って来ることも多かった。

 そんな時間を作ることで、僕は崩壊する自分をくい止めていた。

 読む本も太宰治みたいな暗くて投げやりなものを読むようになった。こんな奴の本なんか、絶対に読まないと心に決めていたのに、ほんと、最低。でもそこに書かれていたのは多くの場合、僕と共通していた。生まれてきてすみません。馬鹿野郎。
 もっとも、君の前では「仮面」である楽天的な僕本来の姿でやってきたし、学校も休むことがなかった。というか、学校に行けば君に会うことが出来るし、芸術系ナンバーワンの僕がふてくされているなんて、洒落にもなりゃしない。僕はいつでも最高じゃなくちゃお話しにならなかったからね。自分のためでなく、二中の不特定多数のために。

 弱音を吐いていい奴と、そうでない奴が世の中にはいる。僕は後者の代表みたいなものだった。例えどんなに心が苦しくても、一癖も二癖もある洒落た文化人でなくてはならない。僕はそれをやり通した。僕たちの名誉のためにね。

 大量の読書生活のおかげで、どんな教師も僕に一目置いた。僕から見ればどの教師も僕の教養のレベルに太刀打ちできる奴はいなかった。よく僕の教養を「雑学」という教師もいるにはいた。自分の小さな庭を守るために。そんな時、僕は容赦なかった。

 特に不良を気取った連中には結構人気があった。僕が発言すると、全校生徒は静まりかえる。教師の意味のない不満を僕は蹴散らした。俺達は缶詰じゃないって事さ。全員不格好な子供かも知れないが、あんた達みたいに終わった人生やってるんじゃないって。俺達の仕事は生きるって事だ。不細工で要領も悪いけど、まだ子供なんだからしょうがない。もっとも、大人になっても変わらない馬鹿野郎が教師になるってケースは多いみたいだけどね。とか、その他いろいろ。でも尊敬できる教師も居たから、僕はやんわりと言葉の中に隠したのだけれど。三日ぐらい経つと理解したりする齧歯類みたいな教師だけど、ちょっとは優しくしてあげた。

 でも、一番嬉しかったのは、君が体育座りで僕を見て、何度も頷いてくれた事。君の視線は僕のダイナマイトに火を付ける。やっちまえってな。だから僕はやっちまう。


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