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君と僕との狂騒曲
【ショタ 官能小説】

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君と僕との狂騒曲-15


 さて、ボーイスカウトのステイタスは色々な技能賞や階級章で判別される。僕たちは技能賞にはあまり執着しなかったが、最も有意義で最も取得の難しい「救急章」を持っていた。「救急章」は、日本赤十字が与える「救急隊員」の資格を取ればクリアできた。

 僕が初級の時した怪我を思い出して欲しい。決して「治療」ではないことを胸に刻み、最も重要な蘇生法(マウス・トゥ・マウスやニールセン式、フロントプレッシャー・アームリフトなど)そして止血法(鎖骨下動脈とか止血帯)部分的な火傷、白い三角巾を目的に応じてテクニカルに折りたたみ、応用する方法。

 僕らは学校の休みを利用して実技を含む講習を得て、試験に合格し「日本赤十字救急隊員」の資格を授与された。この時の経験と知識は、びっくりするほど身体で覚えており、その後に役に立ったのは一度や二度ではない。
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 二年間のボーイスカウト活動で得た経験(根性?)と技術、資格を持った僕ら4人はボーイスカウトのエキスパートになり、(多分)東京のボーイスカウトとしては最も優秀な成績でボーイスカウト一級に昇進した。そして僕らにとって最も重要な運命の日はやって来た。

 信じられないことに、僕は班長にならなかったのだ。その時の隊長や隊付スタッフの目は鋭かったとしか言いようがない。僕は指導者に向いていないことを彼らは見抜いていた。僕が(偉そうに言う無礼を許したまえ)特別な時に役立つ天才型であって、指導者に必要とされる秀才型でないと彼らは判断したのだ。まあ、全体数が少ないって言う理由もあったろうが。

 無論、僕は自分が指導者としての資格を持ってないことを良く知っていたし、どちらかと言えば班長なんかになりたくはなかった。そんな小さな事より、もっと凄い事が結果として残った。

 僕は次長として、君の下に付くことになったのだ。まるで夢みたいな運命を、どうやって伝えることが出来るのか、僕は知らない。中学校二年のスカウト活動をぴったり君にくっついて暮らすことが出来るのだ。テントの中で同じ夜を迎えることが出来る。夢みたいな現実。

 班の名前は「タイガー班」。なんでそうなったのかは忘れてしまったが。同じく大串は「ラット班」というなかなか粋な班名で、バッカーノは「ホーク班」と無難なところで落ち着いた。

 もうひとつおまけに、君と僕は中学校でも同じ2年1組で暮らすことまで決まっていた。僕は神なんて信じなかったが、その時ばかりは神に感謝した。
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 そして、僕には改めて新しい才能が生まれることになる。ギターだ。

 そのクラシックギターは母親が会社の友人から貰ってきたもので、小振りだけど貝の螺鈿細工が施された美しいギターだった。日野市にも楽器店はあり、僕はそこで新しいナイロン弦と初歩的なギターの教材を買った。

 ギターとの出会いは初めてではなく、実際には小学校六年の時に授業で使ったことがあり、僕は一番上手だった。最初はコードを覚え、スリーフィンガーのアルペジオを覚え、PPMの曲をどんどん覚えていった。「五百マイルも離れて」「虹と共に消えた恋」「パフ・ザ・マジックドラゴン」「風に吹かれて」どれもみんな美しい曲だったし、歌詞にはメッセージがあった。前にも書いたと思うが、僕は美しい歌声を持っていた。最盛期では僅かに3オクターブに足りないという、とんでもない音域と腹式呼吸でのちゃんとした発声法も体得していたから、それはすぐ「音楽」になった。

 君に初めて聴かせたとき、君は「豪華絢爛華麗優美」と言って拍手してくれたっけ。

 やはり母が持ち込んだ岡林信康の「くそくらえ節」を聴いたときは正直、ひっくり返るほどの衝撃だった。その後二枚組の「岡林信康の世界」というLPを聴くようになった時、僕の世界観は重大な転回を迎えることになる。当たり前だけれど、一番近い君に飛び火するのは間違いなく、実際にふたりには破滅的な火災が発生した。

 僕はこの世界の醜さを知ることになり、ささやかな歌が世界の歯車を動かすことが出来ることを信じた。何しろ僅か3分間かそこらで人を魅了することが出来るのだ。後に君もモーリスのスモールタイプのギターを手に入れたが、いったいどうやってあの最高裁判所の判決を勝ち得たのか、想像も出来ない。

 こうして二中の二年生には「絵が一番上手な奴」「一番たくさん本を読んでいる奴」に加え、「ギターが一番上手な奴」が追加され、自他共に認める芸術系三冠王が生まれた事になる。


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