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君と僕との狂騒曲
【ショタ 官能小説】

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君と僕との狂騒曲-12


 だから僕の中学一年の後半は、多くの友人を切り捨てて、ボーイスカウトにプラスするところの君との共有する時間に傾斜していった。前にも書いたように、君はあまり多くの友人は持ってなかったから、君には少し時間があった。君はどうしても一歩だけ引いているので、「友人」というよりは誰もが「友人未満」。学業優秀で清潔感の漂う君は、生徒会長みたいな位置づけと表現できるかな。誰もがよく知っていて、敬愛の気持ちはあっても、それ以上ではない関係の集合体。君の心に足を踏み入れる奴はそう多かったわけじゃない。

 僕みたいにオープンで率直な奴にはほっといても自称「心からの友人」がどんどん出来てしまうから不思議だ。本当に君と僕とは性格が正反対なのだ。鏡に映したように、同じひとつの果実のように。
               *
 僕ら多摩一団は「スカウトハウス」というものを持っていた。

 まあ三十年は経っているんじゃないかと思う古い家屋だ。だけど備品を収納した納戸、六畳間と四畳半の座敷があり、厨房も付いていた。

 僕らは定期的に備品のメンテナンスをした。それは斧や鉈を研いだり、テントの綻びを糸で縫ったりしつつ、「班」としての計画などのミーティングを兼ねていた。
 この頃僕はボーイスカウトにおける自分の役割を認識していた。それは僕が「指導者」には向いていないことに起因する。だから、鉈を研ぐことと包丁を研ぐことに費やされていた。薪を割るのも木材を揃えるにも鉈は最高だったし、料理は牛刀の方がナイフよりよほど役に立つという事。それに当時は良いナイフという物自体なかったから。だから僕は班のコックになった。僕は家庭の事情で、料理という物を作ることに長けていたからだ。君は「男子厨房に入らず」の典型みたいな奴なので不向きだった。君は典型的な指導者タイプだったから。誰から見ても、君は立派で誰よりも優れていた。
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 この頃僕はあいかわらず暗闇の扉を前に苦しんでいた。メンテナンスがあるという口実で向かいの地主にしてボーイスカウトの団長の家からカギを借りて、ひとりスカウトハウスに潜り込み、裸になって自傷し、不毛な自慰を繰り返していた。白濁した精液を最後の一滴まで搾り取るように放出し、その精液をずるずる飲み込んでいた。その瞬間に強烈な罪悪感に囚われていた。具体的にどんな風に罰せられるかと思うと、再び下腹部がいきり立った。

 稲垣足穂の「少年愛の美学」を読んだとき、ああ、そうだ、本当に少しの間だけ苦しいのかも。なんて考えた。ただA感覚の方は理解できなかった。どうも、もっと凄くて悪夢のような事が起こるのかも知れない、決してぬぐい去ることが出来ない罪悪感で、そして憂鬱な後悔がさらに自分を苦しめた。全裸で汗まみれになって横たわる僕は、庭になっている椚の木から、夏の激しい蝉の声に満たされていった。
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 僕は運が良かった。その頃に手練手管抜群の少年愛を欲する男に会ったのなら、僕は全てをその人に何もかも与えてしまっただろう。愛か、性欲か。どちらも僕には経験がなかったから。僕は満たされたかった。安心して肩にもたれる事の出来る、誰かが欲しかったのだから。男でも、女でも良かった。でも心の奥では、君の肩に抱かれたかった。あの甘いミルクの匂いに包まれて、そのまま何日でも過ごしたかった。それがどんなに変で、どんなに罪深い事か、おそらくは知っていたから、ますますその憧れが妄想となって僕を苛むのだ。

 神様、僕はどうしてもひとりの女と過ごさなきゃいけない運命なのだろうか。自分の一番大切な人間が、なんで女じゃなくてはいけないのだろうか。僕は漫画みたいに壁に頭を何回も何回も叩きつけていた。僕は神を呪うことを覚えた。
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 僕は「仮面」を発明した。極度のストレスや団体、学校みたいなものに巧妙な役者を生み出すこと。ひとりの「自分」を本体である僕がコントロールする術を身につけるようになり、少なくとも外面的には安定していった。実際、心を明るくしてみたり、暗くしてみたり、そういう演技は楽しかった。僕が「学校で一番演劇が上手い奴」になれなかったのは残念だ。


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