樹理-27
「いいわよ。私はそんなに意地っぱりじゃないわ」
「そうでも無いだろ。まあ意地を張ってもそれで仲が壊れるということは無いけど、気まずい雰囲気で何日も過ごすのはお互い厭なもんだからな」
「そしたら、私は自分が悪いと思ってるのに素直に謝れなかったら便秘なんだけど浣腸してくれる?って言うことにする。それがいいでしょう?」
「そうだな。それは最高だな。それじゃ僕は何て言えばいいんだろ」
「便秘じゃないけど浣腸してくれる?って言ったら」
「そしたらどうするんだ?」
「浣腸して上げる」
「参ったな、それは。それじゃ謝りたくても謝れない」
「大丈夫よ。貴方は口先は素直じゃないけど、根は素直な人だから。そこに惚れたんだから」
「ほら、腰が動いて無い」
「あ、そうだった」
「そんなに子供みたいに無邪気に笑うなよ」
「楽しいわね」
「まあね」
「貴方、本当に有り難う」
「結婚は僕がしたいからするだけで、したくもないのに樹理の為にするというんではない。だから有り難うは要らない」
「うん。でも有り難う」
「それじゃ僕も有り難う。僕と結婚してくれて有り難う」
「貴方と結婚したいから結婚するだけよ。だから有り難うは要らないの」
「真似するな」
スローセックスとかポリネシアンセックスとかいろいろな言い方があるらしいが、要するに無理に高めようとしないで長い時間つながっていれば自然に高まって来るということだろう。雅也と樹里は体をつなげたまま長く話をしていたからお互いの体がつながっているというよりも、互いの体が1つに溶け合ったみたいな錯覚に陥った。そしてそれは、激しく出し入れするセックスとは全く別物の穏やかで深い性感を生み出した。樹里の体は次第に痙攣のような震えが起き始めたが、それは体の感じからくるものか、結婚できるという心の喜びからくるものか分からなかった。多分両方が相乗してそんな感じになったのだろう。それはまた雅也の体にも移って共鳴するような震えを引き起こした。静かで深くて激しい喜びに、二人はまるで永遠のように感じる長い絶頂感を味わった。