星を数えて act.5-1
それは ひらひらと
あっけなく落ちていった
まるで
あのネックレスのビーズのように
星を数えて
act.5 恋忘れ星
「こんなに、よかったの?」
いつもは傷んだ毛先を切る程度なのに。
そう言って目を細める担当の美容師さんに、私はいいんです、と答えた。
「伸ばす意味がないんで」
「そっかー」
失恋か!?なんて、冗談をなげかけてくる。
恋を失うんじゃないんだ
忘れるの
私も あなたと同じように
「ありがとうございました〜」
肩につくかつかないかまでに短くなった髪がサラサラと風になびく。やわらかなシャンプーの香りが哀しい。ゆっくりと私は歩きはじめた。新しい、私のはじめの一歩を。
その足で、バイト先に向かった。
もちろん、辞表だすため。
合わせる顔もないし、こうならなくても、苦しくていつかはやめる道を選んでいただろうな、なんて考える私はやっぱり弱い。
「こんにちは」
「あぁ、叶ちゃん」
店長がタイミングよくレジに立っていた。人の良さそうな顔で、髪きったんだね、と微笑む。
「これ」
私は辞表を差し出した。店長は、少し黙って、それからそっかぁ、さみしいな、と呟いて私を見た。
「今までありがとうございました」
「こちらこそ」
私がお礼を言うと、店長も私にお礼を言った。元気でね、そういって私に手をふり送り出してくれた。
なんだか、あっけない。
全てが。
…壊れてしまったから。
「叶ちゃん」
「…友希さん」
コンビニをでて少しのところで、会いたくなかった人に出会ってしまった。
それは向こうも同じなのだろう、苦々しい顔を隠すことなく私にむけていた。
「崇臣のこと、好きなの?」
率直で唐突な質問。私はゆっくりとうなづいた。