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星を数えて
【初恋 恋愛小説】

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星を数えて act.5-4

「清水さん?」
「…成田(なりた)くん!!」
バイトの制服を着た彼が駆け寄ってきた。髪短いから間違ってるのかなと思った、と緩い表情を浮かべる。
「今日から入る子って清水さんだったんだね」
成田 宙頼(そらより)くんは、うちのクラスの委員長で秀才で男前、と女子の間では人気がある男の子だ。
「月子の知り合いって…」
「あぁ、共通の先輩がいて、その人通じての知り合いって感じかな」
「そうなんだ」
すいませーん、とオーダーするお客さんの声がする。成田くんは元気よく返事をして、後でね、と優しく笑った。





「意外だね、成田くんがバイトなんて」
帰り道。成田くんは、自分の自転車を押しながら、そうかなぁと頭をかいた。はにかんだ顔がやわらかい。
「小遣いほしさにやってみたくなってさ。俺だってバイトくらいするよ?」
委員長なんか名ばかりだよ。
そう言って微笑む成田くん。
「そんなことないよ、普段ピシッと委員長こなしてるし」
「えーそんな風に見られてんの〜?」
「だってはめはずさなさそうだもん」
私は彼を見てそういうと、じゃ今から外そうか、そういってガチャンと自転車にまたがる。
「乗りなよ」
「え?」
「委員長なのにニケツで女の子送って帰っちゃうから」
なんて、あんまり真面目な顔をして言うもんだから、フフっと私は笑ってしまった。
なんだか少し心がほぐれたみたいだった。
「…じゃ、後ろ失礼します」
平坦な金具の上に自分の身をおいた。乗ったよ、と言うと、

しっかりつかまって。

そういって手を掴まれて腰にまわさせられた。

温かくて、男の子のにおい。

崇とは違う、男の子の。

「道ちゃんと言ってね」
「はい」


かちゃん、かちゃん…
ペダルの音が穏やかに風に溶けていく。
夕闇に星が瞬いている。チカチカとした光は、私の胸を切なくさせた。
「あのさー!」
「うん?」
風にのって聞こえてくる彼の声に、私は少し大きめの声で返事をする。
「バイトの帰りこれから送ってあげるよ」
「え?」
「だーから、送ってあげるよ!嫌ー?」


ザーッと、後ろから追い風が吹いた。
一瞬、私は崇を思い出してギュッと目をつぶった。
苦しくなった息をゆっくりと吐いて、大きく深呼吸をひとつつく。


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