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星を数えて
【初恋 恋愛小説】

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星を数えて act.5-2

「でも、もういいんです」

私は下を見て答えた。苦しくて、やるせない気持ちでいっぱいになる。

言いたくないのに。

あなたには。

「友希さんとも会うことももうないんで」
それじゃ、と頭をさげて通り過ぎる。
そのとき何か言われた気がしたけれど、シカトして家路についた。
崇のことになると、心のエネルギーは何倍も消費されてしまうみたいですぐくたくたになってしまう。
そうなってしまう自分ももう嫌だった。

ガチャリと鍵を開けて部屋に入る。床をみると、少しまだ昨日のビーズが転がっている。でも、それを拾おうという気にはなれなかった。
「部屋、片付けよ…」
バイトも探さなきゃ。テーブルの上に広げられたアルバイト募集の広告に少し目をやり、それからあまり使わない荷物をダンボールに戻してゆく。

こんな風に、時間も戻せたらいいのに。

そう思ったとき、ピンポン、とインターホンが鳴った。
「はい」
ドアを開けると、そこには。
「…よ」
崇が立っていた。
「何?用事?」
「…昨日はごめん」
頭を下げる彼をみて、きっと真剣に言ってくれていることはわかった。

でも。でもね。
「うん、もういいから」

ごめんではすまないよ。

すませられないよ。

「叶、お前、髪…」
ふと私をみた崇が呟く。
「うん、切っちゃった。短いと軽くていいね」
私は笑って見せた。

心も、こんな風に軽くなる日がくるのかな。


そんな私を見て、崇は複雑な表情をした。
「私こそごめんね、気持ち押し付けたみたいで」
髪を耳にかける。いつもならさらりとかかるのに、なくなった分、はらりとこぼれておりてくる。
まるで、私の気持ちみたい。
「いや…」
今度は崇が笑って見せた。沈黙が気まずくて、私はぺらぺらとしゃべってしまう。
「私ね、お金ためることにしたの。ほら、ここ狭いし学校からちょっと離れてるじゃない?だから引っ越し資金ためるの」

本当は、あなたから離れたい。

だって、もうそばにいられないから。


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