死神と一緒〜転校・喧嘩編〜-2
「何を?」
もしかして死神の話じゃないだろうな。
すると蒼氷の口から思わぬ言葉が飛び出た
「転校生だ、しかもハーフの女の子だぞ」
やけに楽しそうに話す蒼氷だが下心丸出しにしか見えないのは僕の気のせいだろうか?
「だから早く来たのか?」冗談で聞いてみるがそんなワケないだろう
「当たり前だろ。下見してみんなに情報を伝えるためだ。」
意外な反応に零は呆れてしまった。
「そんなに朝早く来たのなら数学の宿題は完璧だな」何を隠そう今日は数学の宿題の提出期限日なのだ。あれを出さないと数字教師の雷が落ちる。
「あ!」
何かを思い出したように蒼氷が言った
「忘れたのか?」
「……ご名答」
そう言うと蒼氷は力なく去っていった。その後ろ姿を見ながら零は手を合わせながら静かに思った
“バカ”と
朝のHRが始まった時にはほとんどの生徒が席に座っていた。しかし疾風は影すら見せていない。
それにも関わらず担任教師はビックイベントを発表する
「今日は新しく転校生が来てるぞ」
教室の一部から「またか」などと聞こえるのは聞こえない振りをした。
すると教室のドアが開き転校生が入ってきた
教壇に昇り軽くおじぎをした後に微笑みながら、
「璃逢(りあ)・メイティスです。みなさんこれからいろいろよろしくお願いします」
その転校生は腰辺りまである金髪に碧眼の容姿でまさにハーフだった。あちこちから「可愛い」とか「いい」などと聞こえるが僕はそれどころじゃない。あの子が死神かもしれないし只の転校生という可能性も十分にある。
というより「いい」などと言ったバカは誰なのかと思い、声の主を見る。
そこには鼻の下を伸ばした蒼氷がいた。
「……バカか」
思わず右手で目を押さえ天井を仰ぐ。まるで欧米のホームドラマのようだ。それより問題はあの転校生が死神なのかどうかなのだが顔を知っている疾風がいないためわからないままだ。
もう一度蒼氷を見る、元の蒼氷に戻っていてくれ、と祈りながら………
蒼氷はハートを撒き散らしていた……
「もうダメだな」
と、零は呟いた。
そしてHRが終わるとクラスの大半が璃逢のもとで質問などをしていた。疾風の時とまったく同じであり他愛もない雑談であった。
僕はその集団に混ざることをせず蒼氷の下に足を運んだ
しかし蒼氷は席にいなかった……。もしやと思い璃逢の方を向くと案の定蒼氷がいた。
失望していいですか?
バカを眺めていると璃逢と目が合った。するとニコッと微笑み会話に戻っていった。
(なんだったんだろ?)
と、不思議に思いながら立ちすくしていた。
授業が始まっても疾風は来なかった。蒼氷はいやに元気なのが気になったが、璃逢はいたって普通に授業を受けていた。
そして授業が全て終わり生徒達が家に帰る支度をし始める。結局疾風は姿を見せることはなかった。
「僕も帰るか」
ポツリと呟き席を立つ。ここ二週間は疾風を監視するため二人で帰宅していたが疾風がいないため今日だけは一人での帰宅だ……。別に寂しいという感情は無くむしろ気が楽な方であるが疾風が家に居るのならどんな惨事が待っているかが不安でたまらない。
すると背後からバカの声が聞こえた。
「今日は疾風が来てなかったな」
さっきまでハートをばらまいていた蒼氷だ。僕に喋りかけた途端に表情が元に戻っていた。
「何かしてないか心配だ」「へぇ、疾風には優しいんだな」
ニヤニヤ笑いながら蒼氷は言った。
「僕は家が心配なんだ、先に帰るからな」
そう言って鞄を持ち教室を後にする。
下駄箱に着いた時
(あ、弁当箱を忘れた)
急いで教室に戻るとやはり蒼氷が璃逢にハートを撒き散らしていた。