投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

忘れ物
【寝とり/寝取られ 官能小説】

忘れ物の最初へ 忘れ物 1 忘れ物 3 忘れ物の最後へ

邂逅-2

 「覚えてないと思うんだけど。」
 高三の夏。僕は体育でグラウンドを走っていた。
 せんぱーい、っと呼びかける女の子の声が聞こえて振り向くと、教室の窓から友里が手を振っていた。
 僕は視線を逸らした。そしてもう一度友里の方を見た。彼女はもう一度手を振った。どこか思いつめたような表情で。僕は再び目を逸らし、そのまま走り続けた。
 クラスメートたち大勢の目に囲まれて単純に恥ずかしかった、というのはもちろんだが、手を振り返せない理由が僕にはあった。
 部活を引退していた僕は、それ以降友里との接触がないまま卒業した。
 「覚えてますよ。とてもよく覚えています。」
 「そうか…そうだよね。せっかく手を振ってくれたのに無視しちゃったんだから。恥ずかしい思いをさせてごめんね。」
 友里は少し寂しそうに、ふ、っと笑った。
 「いえ、私こそいきなりあんなことをしてしまって。すみませんでした。それを謝りたくて。」
 「え、じゃあ二人とも同じ話だったの?」
 「そうみたいですね。」
 しばし見つめ合った。
 「あのね、」
 「あの、」
 また同時。二人とも笑ってしまった。
 「席替えターイム!」
 「えー!合コンじゃないのよ?」
 「だってみんな動かないし。」
 「まだ酔ってないからなあ。」
 「あら、酔わなきゃ私の隣に来れないわけ?君。」
 「せ、先輩…そんなわけな、くはなかったり。はは。」
 「いいから来なさい。」
 「はいー。」
 とかなんとか。みんなゴチャゴチャになってしまって。
 結局、友里とはそれ以上の話は出来なかった。


忘れ物の最初へ 忘れ物 1 忘れ物 3 忘れ物の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前