投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

祭りの日の儀式
【若奥さん 官能小説】

祭りの日の儀式の最初へ 祭りの日の儀式 21 祭りの日の儀式 23 祭りの日の儀式の最後へ

悪友たち-1

「ありがとうございましたぁ」
 今日、最後の客をみなみが見送った。
「ふぅ〜、後半忙しかったね」
「ああ、あの時間で外から来る団体さんって珍しかったな」
 臣吾の店の客は、ほとんどがこの街か近隣の市町村から来る馴染み、または馴染みからの紹介客で、まったくの外部からの来店は、さほど多くはない。
「忙しいっていうのはいいことだから、疲れ具合も違うよね」
 みなみは、肩をグルグル回しながら言った。
「みなみ、悪いんだけど後片付け頼んじゃっていいかな?」
「そうね、今日は打ち合わせだもんね。任せて、年に一度の盛り上がりだから、頑張ってね。忙しいから大変だけど」
「悪いな。少しはやろうと思ってたんだけど、こんな時間になっちゃったから」
「大丈夫よ。明日は休みだから仕込みはないし、洗い物だけだから」
「じゃあ任せるね」
「うん。お任せあれ。臣吾も気を付けてね。お祭りの準備も忙しくなってきてるから」
「ありがとう」
「行ってらっしゃい。帰ってきたら、疲れを取ってあげるからね」
 みなみは手を振って臣吾を送った。

 焔の祭り本番まで一か月をきり、準備も佳境を迎えていた。
 今日は、近隣市町村との合同会議に向けての打ち合わせがある。
 合同会議と言っても、こちら側から来賓に対して既に送ってある招待依頼への返答と、当日の進行について詳細を詰めることになっていた。
 来賓の応対は、実行委員会が主だって行うものだが、来賓席やエスコートなどを一部焔民が協力するため、会議に出席することになっている。
 副会長の本村悟と、宣伝部会長の臣吾が会議に出席する。

 会議は、出席者の確認と広報活動の報告が主。
 出席者については、近隣市町村の副首長、観光部長クラスが臨席するとの報告を受けた。
 そこら辺は、役場勤めの悟がいるから心強い。
 他にも、近隣の観光関係企業、商工会などが出席予定者として、リストに記載されている。

 もう一つの議題である広報活動については、これこそが焔民が受け持っている中心的な仕事であり、この祭りにおける集客部分での大きな責を担っていると言える。
 何度か会議を重ねては来たが、ここにきて新たな案が出てきたりもし、議題として挙げなくてはならない。
「今になってしまって大変申し訳ないのですが・・・・・・」
 悟が切り出した。
 案内板の設置も、広報担当の仕事になっているのだが、先週になって、近隣市町村にもルート案内板を設置して欲しいとの要望が耳に入ってきたのである。
 行政に籍を置く悟のネットワークを使えば、各市町村への打診は造作もないことではある。しかし、昔からの顔役が名を連ねる委員会に話を通しておかないと、後々厄介になることは目に見えている。
「それなら、役場に勤めている元村君でちょうどいいじゃないか。実行委員会の名前で構わんから、直接連絡してくれんか」
 最長老で、この祭りの重鎮の一人であり、実行委員会の実質的権限者である名誉会長から了承を得ることが出来た。
「わかりました。早速明日にでも連絡してみます」
 案外あっさりと話が進んだので、この日の会議は予定よりも早く終了した。

「ゴネられたらどうしようかと思ったよ」
 帰り道、運転しながら悟が言った。
「そうかい?物分かりがよさそうな人だとずっと思ってたけど」
「まあ、今はだいぶ丸くなったけど、昔っからすぐにヘソを曲げるってんで有名な人なんだよ」
「ふーん。そうだったんだ」
 長年この地に住み、古くからの人間関係がある悟にとっては、厄介な人間の一人だったらしい。
 最近越してきた臣吾にとっては、人の好さそうな爺さんにしか見えないのだが。
「なあ、悟。今日時間あるかい?」
「どうした!?何か詰めなきゃならないことあったっけ?」
「いや、祭りのことじゃないんだけど。ちょっと聞きたいことがあって・・・・・・」
「別に構わんよ。ただ車だから、一回家に戻って、久美に車出してもらわなきゃならんけど。飲みながらがいいんだろ?」
「すまんな。出来れば、酒の力を借りたいような内容だからな」
 苦笑いしながら臣吾が言った。
「どんな内容だよ?」
 悟も笑いながら答えた。

「久美ちゃんごめんね。夜遅くに」
 一つ年下の久美のことは、保育園の頃から知っていた。
「ううん、全然。そうなることは予想していたから」
 高校教師の久美は、気が利くし、頭の回転も速く、昔から優等生であった。
 嫌な顔一つせず、車のキーを取り出した。
「透ちゃんのとこでいいの?」
 行きつけの居酒屋「Heat Beat」。
 久美の同級生、臣吾からすれば一つ年下の後輩である堀内透が経営する居酒屋だ。
「ああ、頼むよ」
 Heat Beatまでは、車で5分ほど。
 たいした距離ではないが、歩けばそれなりの時間が掛かる。

「おーっす。まだいいかい?」
「ちわーっす。どうぞぉ」
 ここの閉店時間は、12時。あと2時間ほどだ。
 先客が4組。カウンターの2人組は、何度か見掛けたことがある。確か、隣町の人だった。
 カウンターの右端に一人で座っているのは、工務店で現場監督をやっている男。名前は知らないが、良く知った顔だ。
 こちらに気が付くと、右手を軽く挙げ、挨拶してくれた。
 臣吾と悟も、ペコリと頭を下げた。
 もう二組のうちの一組、テーブル席で盛り上がっている3人は見掛けたことが無い顔だった。
 この辺の人間は、外部からの訪問者に対し、異常なほど警戒心を持つ傾向にある。
 ちょっとでも見ない顔ならば、あれはどこの誰なんだろうと詮索する気質がある。
 臣吾たちの年代は、多少その気質が薄らいできたが、それでも都会の人間から比べれば、かなり過敏であると言えよう。
「体育館の補修工事業者の人みたいっすよ」
 早速3人組の情報が透から入った。


祭りの日の儀式の最初へ 祭りの日の儀式 21 祭りの日の儀式 23 祭りの日の儀式の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前