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疼きに喰い込む赤い縄
【その他 官能小説】

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喰い込む-4

 「さあどうする。もっと欲しいか?」
 鼻の奥がツンと痛み、涙が滲んできた。
 幸雄さんを愛し、もう後悔するようなことはするまいと強く願ったのに。気付けばまた先輩に痛めつけられて、その被虐の快楽に溺れてしまっている。いけない、こんなことは。
 でも。
 でも、体が、私の体が…。
 「して…」
 「なんだって?」
 「して、下さい…。もっと乱暴に縄をめり込ませて擦り上げて下さい!」
 「ほう、なぜ?」
 「…私のこんな所なんか、グチャグチャに痛めつけて欲しいんです!」
 「そんなことをしたら痛いぞ?」
 「痛い…そう、痛いのに、それが気持ちいいんです。ああ、私は今こんなに痛いことをされているんだ…そう思うとなんだか興奮してきて、痛ければ痛いほど痺れるような快感が体を震わせる…。私は、私は…ああ、私はもう…この歪んだ悦びから抜けられない…。」
 「なるほど。夫を裏切ってでも、その倒錯した快楽を求める、ということだな。罪悪感より自分の快楽を優先する、呆れた女なんだ、お前は。」
 「う…。」
 ダメだ、そんなのは。情欲に負けてまたも過ちを繰り返すなんて…。でも、でも…疼くのだ、体が。欲しがるのだ、苦痛を…。ああ、ダメよ、ダメ!
 私は縛られている両手を握りしめた。掌に爪が刺さるほど強く。
 「…もう。」
 ようやく声を絞り出した。
 「ん?なんだ。」
 「もう、やめて下さい…」
 「ほう、まだ抵抗するというのか。」と
 「あたりまえ…じゃないですか。」
 「そんなに夫を愛しているのか。」
 「愛してます…とも。」
 「だろうな。そうでなければそれほどの快感に勝てるはずがない。」
 「だから、もう…やめて下さい!」
 ふんっ、と息を吐いた先輩が上を向いて言った。
 「立派なもんじゃないか。どうする?」
 「…誰に、何を…」
 ポロローン。
 先輩のスマホに着信した。
 それを見た先輩が一つ頷いた。
 「教えてやれってさ。そうすれば落ちると言ってる。俺も同感だ。」
 「え?何を…」
 「お前がなぜこんな目にあっているのか、をだよ。」
 「なぜ、って…」
 彼は、今まで見たこともないような冷たい瞳を私に向けた。しかしそれは、同時に憂いの揺らぎを秘めていた。
 「よく聞け直香。お前を倒錯の泥沼に突き落としたのが誰なのかを教えてやる。」


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