喰い込む-3
先輩はクリップの後端に細身の鎖を引っ掛けた。左右ともに。そしてその反対側に、テニスボールぐらいの大きさの黒い球を吊るした。それはちょうどベッドの高さなので、鎖は真っ直ぐに垂れている。
「さて、上昇再開だ。」
グン。
赤い縄が少し上げられた。
私は足の力で体を持ち上げた。
「うっ…」
その瞬間、左右の乳首が下に強く引っ張られた。
「分かったか？ケツを持ち上げようとすれば、片方で４．７キロの重りがお前の乳首を引きずり下ろす。２Lのペットボトル２本より重いぞ。クリップは絶対に外れない強さに締め上げてあるから、最悪、乳首が千切れるだろうな。」
「ち、乳首が千切れる…」
そのとき私はどんな苦痛を感じるのだろう。そしてどんな…。
グゥン。
さらに縄が上げられた。
「くはぁ…」
反射的に立ち上がろうとした私の乳首が悲鳴を上げた。
「ほらほら、言ったろう？立ったら大変なことになるかもしれないんだぞ。」
立てば乳首が、立たねば股間が猛烈に痛め付けられる。どちらかしか選べないというのか。
グイン。
「くうぅ…そ、そんな！」
赤い縄はさらに引き上げられ、乳首に繋がれた二つの重りがベッドから浮いた。見下ろすと、信じられない長さに伸ばされた乳首が見えた。
「ならば…」
どうにもならないのなら、股間の苦痛だけでも…。私はつま先立ちになった。ギリギリで赤い縄は私の皮肉の谷間に埋まったままだ。だが、圧力はほとんど掛からなくなった。
「甘いねえ。」
ベッドから少し離れたところに垂れ下がっていた縄が引き寄せられ、私の右膝が曲がった状態に縛り上げられた。乳首からぶら下げられている黒い鉄球がユラリと揺れた。
「う…」
左足のつま先だけで全体重を支えることなど出来ない。縄の反撃が始まった。
「いいねえ。ちゃんと喰い込んでるじゃないか。」
私の右側にしゃがんだ先輩が、股間を覗き込んでそう言った。
反対側の膝も同様にされ、私の体は完全に宙に浮いた。
グイー。
縄が膝を斜め上に持ち上げていく。
「これでどうだ。ラクになったか？体重が分散したからな。」
股間と自分の足だけで体重を支えなくてよくなった分、ラクと言えなくはないが、股間への締め付け具合は変わらない。
「…同じです。自分の足で支えるか、膝を持ち上げられているかの違いだけで。」
グイー。
「うっ…」
全ての縄がさらに上げられ、
後ろ手に縛られた手首、両膝、そして股間…。たった四点に全ての体重と合計９．４キロの重りの重さが集中した状態で私は吊り上げられている。その姿はスキー・ジャンプの滑降中の姿勢に似ているかもしれない。ただし…。
「ひ、広げないで下さい。そんなに膝を左右に広げられたら、もっと深い所に喰いこむ…」
ジャンプみたいに格好よくなんかない。
「おや、気付いたか。」
両膝を縛っている縄は、左右に広がる形で斜めに天井に繋がっている。つまり、上昇すればするほど足を左右に引き、股を開かせていく。
グイー。
股間の縄が上昇を再開した。
「やめ、やめ…」
グイーン。
「あ、あ、ああっ！」
限界まで股を開かれたことで剥き出しになった、谷間の最も深い所にまで赤い縄がギシっとめり込んだ。
「どうだ、特別にオーダーして作らせた縄の味は。最高強度のケブラー４９を何重にも編み上げてあるんだ。」
グイン。
「ぐ…。さ、裂けるぅ…」
「女のそこはそんなにヤワじゃないさ。縄目の痕がクッキリ残るがな。既にご存知の通り。」
そうだった。二ヶ月前にも酷い縄の痕を付けられて、幸雄さんに見られないかハラハラしたものだ。
「車で使った縄よりデコボコが大きいから、もっと凄い痕が付くだろうけどな。それに、こんなことも出来る。」
「え、何…？」
ジュブッ。
「ぐあっ！」
前の縄だけが引き上げられ、すっかり潤ってしまっている谷底を滑るように擦り上げた。
「逆も出来るぞ。」
ジュブルウ。
「ぐふぅ…」
黒い陰毛が赤い縄に巻き込まれ、そのうちの何本かはブチブチと引き千切られた。さらに後ろの穴の淵にまで縄は襲いかかった。谷間を擦られる痛み、毛が引きちぎられる鋭い痛み、それに加えて鈍い痛みが肛門に走った。ごちゃ混ぜに襲い掛かってくる苦痛に、私はワケが分からなくなってきた。
「それそれ！」
グイ、グン、グイ、グン…。
「あっ、ああ、あう、くぅ…」
赤い縄が何度も前後に往復し、その度に私の中央ラインが、自分の分泌したヌルヌルで滑って激しく擦られ、悲鳴を上げた。
「もっと大きくも動かせる。」
グイーン、グーン、グイーン、グーン…。
「くはああ、あうぅぅ、あはあぁあ、あっ、くぅ…」
振幅が大きくなったことで、一回あたりの擦れる時間が長くなった。だがそれだけではない。縄の所々に作られた結び目が、通り過ぎるたびに私の敏感な蕾を殴りつけ、谷間を抉った。
そのあまりにも凶暴な赤い縄の仕打ちに私は…失神しそうなほどの恍惚を味わった。
「いい顔してるぞ、直香。最高に可愛いぞ。」
「先輩…」
「もっと欲しいか。」
私は目で答えた。
「いいのか？お前の夫が見たらどう思うだろうな。よその男にこんな非道いことをされて悦んでしまってる自分の妻の姿を見たら。」
「幸雄さんが…私のこんな姿を…」
被虐の快感に溺れ痴態を晒す私を夫に見られてしまう…。その様子を想像すると、あろうことか私はゾクゾクするようなさらなる興奮を覚えてしまった。そんな自分に、私は困惑を通り越して恐怖を感じた。