電脳少年の宅配-1
暗い。傾いた木造家屋のアパートは薄汚い路地の奥に佇んでいた。
「……ここで、いいのかな?」
<That's right.This is its paradise.KIRA>
後のポケットにねじ込んだスマホからの声は感情がない。
ミシミシと音を立てる階段を昇って行くキラの装いは、その水蜜桃のような美尻がはみ出す程の白いローライズのショートパンツ。輝くばかりの美脚が眩しい。
お揃いの白いカットソーのへそ出しは当然。どころか、下腹の際どいところまで晒している。
これが妙齢のご婦人だったなら間違いなく問題だろうけど、その美しさとは関係なくキラはどこからみても小学生なのだ。小学生が裸同然の格好をしているからと言って咎められる事はない。
その左の耳には深紅のルビーのピアスが暗闇の中で光る。
ただ、首にしっかりと巻かれた銀色の光を放つ鋲が打ち込まれた赤い首輪だけが、この少年の妖しげな背徳感を滲ませている。
アパートの二階は、昭和の昔からあるような古い佇まいを見せる二十畳はあろうかという大部屋。
鍵どころか扉も襖さえない開けっぴろげの空間だった。畳は擦り切れてささくれ、陽に焼けて色を失っていた。家具や調度はなにひとつなく、ちゃぶ台の上にマニアックな改造PCと何かごちゃごちゃと周辺機器らしき物が整理もされずに積み上げられていた。
そして、中央にお世辞でも小綺麗とは言い難い男が四人、車座になって発泡酒を飲んでいる。
色褪せたTシャツにその隆々とした筋肉を浮かび上がらせたやぶにらみの男が睨むようにしてキラを見据える。
神経質そうな眼鏡の小男は手元のビデオカメラと交互に目を走らせる。
痩身で長身、まるで電柱のような男はサイズが合わないのか、腹を丸出しにした青いジャージ。
そして、近づいたなら若い女性どころかおばさんまで逃げ出すような、身体中に吹き出物が出たニキビ男は、常に噴き出す汗を拭おうともしない醜悪なデブ。
四人共に共通するのは、精力を持てあまし今にも犯罪を起こしそうな飢え乾いた「オス」の匂いだった。
「あれ?話じゃ男の子ってことだったけど?」
小男が眼鏡を直しながらキラの場違いにファッショナブルな姿に首を傾げた。
「オンナじゃ逆に大歓迎だけどな」
「って言うか、これ、モデル?ほとんどアイドルじゃん。それにこの子、どう見ても小学生だよ?」
「どっちでもなんでもかまわないねえ、ボクはあ。こんな別嬪、そうそうお目にかかれないしさあ。ぶち込める穴があればなんだって。おおうっ!」
ニキビ男は興奮して息を荒らげながら早くも自分のトランクスに手を突っ込み、自分の陰茎をしごき始める。
四人の薄汚い、見るからに脂ぎった精力を発散する男たちの前に立ちつくしたキラは、俯きかげんでその幼く美しい桜色の唇から真珠のような歯を覗かせた。