四度目の恋-5
「パン屋でのイートインってのも格別だな。」
翌日、俺は再び風馬のバイト先であるパン屋に足を運んだ。
「パンはやっぱ焼き立てに限るからね、あっお替りいる?」
「おうっ!わりーな。」
そう誘われ、俺は空になったカップを彼に差し出す。
この日も閉店時間の迫った時に足を運んで来たので、客の姿もなく物静かで。
漆黒の色をした液体を注ぐ滑らかな音だけがこの店内に響き渡る。
「それで?どーなのよ、そっちは。」
確か柊さんの後輩の女子とトラブルを抱えているらしいが。
「あの後お前らの本心をその後輩に言ったんだよな?」
「うん、どうにか彼女も家に居てくれて、それから二人で思ってる事を。」
「騙すつもりもからかうつもりもないって。」
「うん、……まぁね。」
「それからどうした、仲直りは…。」
そう質問すると彼はブンブンと首を横に振った。
「あれからまだ若葉ちゃんから吉報を耳にしてない。」
「そっかぁー、まっこういうのは時間の問題かもな。」
一呼吸し、腕をうーんと伸ばす。
「それで?君のほうはどうなのさ、告白は?あれからデートとかしたの?」
「……。」
それを問われ、我に返りつい先ほどまでニヤニヤしていた顔を消し、少し寂しい表情で珈琲を口にし、カップをテーブルに置き、一度間を置いて、それから。
「実は…。」