新たなる犯罪-2
「どうぞ」
秘書がコーヒーを持って来た。
「サンキュー沙耶。」
沙耶はニコッと笑った。そんな2人の些細なやり取りだけで何となくただの社長と秘書の間柄ではない雰囲気を感じた。
「あ、秘書の熊谷沙耶は私の彼女なんです。」
余計な詮索をされるのが面倒だと感じたせいか、中島は自ら沙耶を紹介して来た。
「オープンなんですね。」
普通社内での恋愛はあまり公にしたがらないものだ。しかし何の躊躇いもなく言い切った中島に少し羨ましさを感じた。
「まー黙ってコソコソやるよりはもうオープンにしといた方が疲れないんで。そこらでキスしたってみんな関係を知ってる訳だから、あーまたしてるよぐらいにしか思わないから楽ですよ。」
「そ、そうなんですか。」
苦笑いを浮かべるマギーだが、ここら辺は都会と田舎の社風の違いかなと思った。
「だからここでヤッちゃう時もあるもんな!」
「ば、バカ…」
「ハハハ!」
沙耶は恥ずかしそうに下を向いてしまった。紳士的なようで下ネタも飛ばす。社長としてはどうかなという感じはするが、逆にそれが飾らない普通の男に見えるとも言える。どちらにしろ裏はあまりない人間のように思えた。
「で、例の連続全裸張り付けの動画でしたっけ?」
いきなり本題に入る中島。マギーはスッと姿勢を正した。
「はい。動画をチェックしたくとも、すぐに削除されてしまいますので細かくチェック出来なくて。でもすぐにこう言う動画が削除されるのは良い事なんですけどね。」
「基本投稿は自由に出来ますので。一度チェックしてからアップして良いものか悪いものかを判断するのが1番いいんでしょうが、なんせ投稿される数が数ですからね。何人人を雇っても間に合いません。だからアップされた後に相応しくない動画を削除すると言っあ形を取ってます。あとは見ている人からの通報を受け、チェックして相応しくない場合は削除してます。この通報が実は我々の経費削減にもなってるんですよね。我々の代わりにチェックしてくれてる訳ですから。」
「なるほど。」
「あとは最近は yourtubeで稼ぐ人も多いですが、動画にはいいねとダメねマークがあり、ダメね数が多すぎる動画は広告収入が入らない仕組みになってます。秩序に反する投稿を抑える効果があります。殆どの人は収入目当てにより面白い内容をアップし閲覧回数を増やしたい訳ですから、秩序に反する投稿をして収入がストップする事はしたくないという心理が働きます。だから意外と自制が効くんですよ。稼ぎはいらないからとにかく目立ちたいと思い、例えばコンビ二のアイスケースに入って寝転んでみたりとかする人らはごく一部なんです。殆どの人らが稼ぎたいから面白い内容をガンガンアップして人気 yourtuberになり閲覧数を増やしたいという人らですから。」
「そうなんですか。」
今までただ漠然と暇つぶしで見ていた yourtubeだが、自分のクリック1つが yourtuberらの稼ぎの一部になるのだと言う事を強く意識させられた。何気なく設置されているいいね、ダメねボタンにも、実は重要な役割があったんだなと思い知らされたマギーと華英であった。