想-2
「あの、信之」
それでもきちんと弁解しようとする由布子さんを優しく止めて
「分かってる」
そう笑った。
何が分かっているんだか。
なんで笑っていられるんだか。
自分自身が分からなくなって
でもそう言わないと由布子さんが傷つきそうで
どうにもならない空気をリセットしたくて立ち上がる。
手を引いて車に戻って
話さなくていいようにラジオを付ける。
聞こえてくるパーソナリティーの声は明るくて
その笑いに救われた気がした。
寄り道をしないで、由布子さんの家の前で車を止めて
「夕飯食べなくてごめんな」
ごめん。ごめん。本当にココが限界なんだ。
笑った顔に見えるように口角をあげた。
あ〜・・・
こんなにも泣きたい気持ちなのに
顔は笑えるんだな。
冷静なその感情とともに
やんわりと、由布子さんを車から降ろした。
「あのっ、信之、ごめん、ね」
謝らないで。
みじめになるから。
謝らないで。
思い知らされるから。
どれだけ、貴女が兄貴を忘れていないか、を。