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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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もう一人の自分-1

「それでさぁー。」
「えー嘘♪マジでぇー!」
「………。」

放課後、私の前を歩くクラスメートが楽しそうな談笑をする。その横顔に悩みの影は一つもない。

私は未だ茜ちゃんとあれ以来口を聞いていない。

「先輩!騙したんですかっ!私の事を!」
「何て嫌らしい人!」

最近私の脳裏に浮かぶのは天使のように愛らしい後輩の裏切られ激怒する顔ばかり。

最初は私が、そして風馬君が彼女に何をしたって言うんだと困惑するばかりだったが。

「きっとその人はまだ未練があったんじゃないか?」
「柊さんの為に断ち切ったフリをしたんだよ。」

ドーナツ店に突然現れた佐伯君からのアドバイス…。それによって私はようやく気づく事が出来た、こんな…考えてみればこんな簡単な事に。

「若葉ちゃん…。」
「っ!」

またも考えに老け、そんな私に気づき風馬君が声を掛け、はっと我に返る。

「ごめん。」
「…どうしたの、やっぱり彼女の事?」
「……。」

無言で首を縦に振る。

佐伯君も私のせいではないと労ってくれたけれども。それでも私が、私が彼女の気持ちに気づいていれば、あんな…あんなに怒らせて傷つける事もなかった、それは動かしようもない事実だ。

「茜、ちゃん…。」
「若葉ちゃん。」

勿論何度か彼女に直接会って謝りたいと、「気づいてあげられず、あんな真似してごめんなさい!」って言おうと思った。けど、あれだけ怒らせておいて、ううん!それ以前に私がやってしまった事を思うと、会うに会える筈もない!私だって逆に茜ちゃんの彼氏を好きになってその人に恋していて、それでも彼女の為に溢れ出る恋心を必死に抑えているそんな最中に意中の人を軽々しく会わせられたら、何を考えているんだ!人をからかってるの!?と激怒してもなんもおかしくもなんともない。

私はあまりにもシャレにならないたちの悪いちょっとした親切で、大切な人の心を巨大な鎌で思いっきり引き裂いたも同然。

それで、それで!向こうはそんなつもりはないと悪びれた顔の一つ浮かべなくて、間違っているのは自分なのかと…。

そう深く考えれば考えるほど鳥肌が立ち、ゾッとしてきた。

…やっぱり、やっぱり私は、とんでもない事を。

寒気がし、顔も青ざめる…すると。

「しっかりして!」
「っ!」

本日二度目。今度は少し強めな口調で。

「風馬、君…。」
「はい!深呼吸!すぅーー、はぁーーーー。」

と、多少大げさに見せつけるようにその仕草をする。

「…だって、私は!」
「佐伯君も言ってただろ!君のせいじゃないって。」
「けど!……風馬君こそ気にならないの?」

彼だって当事者の一人だ、そりゃー彼女とは別に同じ部活の後輩と言う訳ではないが。

「勿論、責任は感じてるよ。けどだからってそうやって下を向いて自身を追い込んだってどうにもならないよ。」
「そう、だね……。」

隣で風馬君が居てくれなかったらこのままずっと震えていたかもしれない。

「なら一体どうしたら良いんだろう。」

自分を責めるのは正解ではない、それは分かった。じゃーどうしたら。

単純に勇気を振り絞って言えればそれが一番なんだが、そうもいかないからこうしてずっと悩んでいるわけで。

「ならこんな方法はどうだろうか。」
「えっ?」

風馬君、何か良いアイデアでも?



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