悪だくみ-8
食事を終えて県警本部に戻ると、昨日まで張り詰めていた緊張感がすっかり消えているような気がした。
「どうしたんですかねー?私もっと慌しく動いてると思ったんだけど…」
華英が不思議そうな顔をした。マギーはその理由に気付いているようであった。
「そりゃそうよ。犯人捕まえたからって何のメリットがあるのか考えたらねぇ…。」
「メリット??」
「うん。だって被害者が真っ当な女性政治家なら何が何でも捕まえて被害者の威厳を保とうとするけど、被害者がアレじゃねぇ…。世間からアホみないな女政治家を擁護したって見られちゃうじゃない。逆にふざけた気持ちで政治家やってた馬鹿な女政治家にザマミロって感じじゃない?必死になって犯人探すの馬鹿らしいじゃん。」
「確かに…。」
「普通なら女性市長をあんな目に遭わせた犯人を逮捕したなら警視庁総監賞モンだけど、あんな市長じゃそれもないだろうし。彼ら、常に表彰されたくて仕方がない連中ばかりだし、手柄を立てて私達みたいな女になんか負けないってトコ見せたい連中ばっかよ?きっとねー、この事件、私が捜査本部長して快く思ってなかった人ら、都合良く私達に任せて来るわよ?」
「えー?そうですかねぇ…。」
「間違いないわよ。ほら、見てなさい?安川さん。私に対して不快感露わにしてたけど、きっと他にしなきゃならない捜査があるから抜けるとか言って来るから。」
「いくら何でもそれはないでしょー。」
そうヒソヒソ話していた2人だが、そんな2人を見つけた安川がツカツカとこちらに向かって来た。
「菜月、悪い!他に事件抱えちゃって、そっちに回らなきゃならなくなったんだ。」
あまりにもマギーの言う通りの言葉が出てきて唖然とした華英。マギーは特に動揺する事もなくサラッと答えた。
「分かりました。そちらの任務を優先なさって下さい。」
「ああ。頼んだぞ?」
安川はイラっとするような笑みを残して去って行った。
「マジかー…」
華英は呆れながらそう言った。
「あんなもんよ。だからあの人は上に行けないのよ。この事件しか見えてないから。この事件が解決したら終わりだと、そう短略的にしか見れないからダメなのよ。この事件はREVOLUTORなる犯行グループが起こした手始めの事件に過ぎない。彼らにはもっと大きな目的がある。そこを読まないといけないのよ。そんなに目先の表彰状が大切かしらね。あんな無駄にお金のかかった紙切れなんて。トイレットペーパーにもなりはしないわ。」
そう吐き捨てるように言ったマギーに華英が言った。
「マギーって、たまに毒吐くよね。強烈な。」
「そ、そう??」
思ってもいなかった事を突っ込まれ少し動揺するマギーに、華英は肩に手をポンと置いて笑った。
「でも好きだよ、マギーのそーゆートコ♪」
ちょっと恥ずかしくなってしまった。
「何よ…。」
「別に?フフっ」
マギーの無邪気な笑みにマギーは思わず視線を外してしまったのであった。