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良助
【青春 恋愛小説】

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1 裕子-19

 「あら、室野さんどうしたの? 1人で」
 「あ、裕子か。今涼子も来るよ。此処に座んな」
 「うん。小山君此処にしよう」
 「僕、その席厭だ」
 「私が隣に座るからいいじゃない」
 「それじゃそうする」
 「文化祭の後田宮さんと3人でカラオケ行くんだって?」
 「誰に聞いた?」
 「そんなことみんな知ってるよ」
 「田宮さんお母さんの具合が悪いらしくて心配なんだ」
 「何か病気?」
 「ただの風邪なんだって言ってたけど」
 「僕の母さんなんか風邪惹いたこと無いけどな」
 「だって仕事してんでしょ?」
 「うん」
 「何の仕事だったっけ?」
 「インテリア・デザイナー」
 「何で室野知ってんだ?」
 「だって名簿に書いてあるじゃん」
 「そうか」
 「凄いのね」
 「何が?」
 「その割には小山君美的センスが無いね」
 「何で?」
 「だって田宮さんにも涼子にも興味示さないじゃない」
 「僕の美的センスは凡人とは違うんだ」
 「へえ、裕子はどう思う?」
 「小山君の美的センス?」
 「うん」
 「あると思う」
 「ほら見ろ」
 「何が?」
 「大和田さんもこう言ってる」
 「裕子は誰の悪口も言わないんだよ」
 「お前も見習え」
 「はいはい」
 「どうした?」
 「何が?」
 「今日はいやに素直じゃないか」
 「私はいつも素直なの」
 「そうは思えない」
 「小山君、ほらラーメンが伸びるよ」
 「ああ、そうか」
 「ほら、もっと丼近づけて食べた方が食べやすいよ」
 「ああ、そうだな」
 「女に囲まれて育つと裕子みたいに細かく世話焼いてくれないと駄目なんだな」
 「小山君は素直に育っているから室野さんも少し口を慎まないとうまく行かないのよ」
 「はいはい」
 「あらー、3人で仲良くやってんじゃないの。お珍しい」
 「ゲッ。木原その格好で学校から出てきたの?」
 「何で? 店の前で着替えたと思ったの?」
 「そんな格好で外に出るなよ」
 「どうして? 目と鼻の先じゃない」
 「粕谷君は?」
 「ラグビー部の後輩とどっか行った」
 「その服買ったの?」
 「これ? 自分で作ったのよ」
 「それだよ」
 「あ、これ? これは服じゃなくてタイツ」
 「タイツって腰から下だけだろ」
 「だからこれは全身タイツ」
 「自分で作ったの?」
 「まさか。これはバレーの練習用で前から持ってたの。どうして?」
 「聞いただけ」
 「小山君もタイツ穿いてたじゃない」
 「うん。西洋の騎士みたいに見えない?」
 「見えない」
 「そうか」
 「小山君脚が長いから格好いいよ」
 「そうか、そうか」
 「でもあのブルマはあんまり良くないな」
 「あれは代用品なんだ」
 「今私毎晩縫ってるの。今日も帰ったらやらないと」
 「間に合いそうか?」
 「うん、大丈夫よ」
 「間に合わなかったら私のブルマ貸してやるよ、小山君」
 「要らないよ、お前のなんか」
 「私のブルマ貸してあげようか」
 「小山君人気者だね。みんなブルマ貸してくれるね」
 「みんなって誰? ああ田宮さんか」
 「僕は好きな女の服を着る趣味は無いんだ」
 「へえ? 何?」


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