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僕は14角形
【ショタ 官能小説】

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僕は14角形-9



「いちご」はいわゆる「可愛い系」で服もフリフリだし茶髪のくせっ毛だ。そんな彼女からお誘いを受けたのは金曜日の午前中だった。

「家族からの?招待?なんなんですか、それ」

 草冠いちごは満面の笑みを浮かべ、僕の机の窓際に座った。綺麗な花には。いやいや。

「うちって、おのこが居ないのよ。だから、私の未来の旦那様が草冠家の当主になるの。だからまあ、お披露目かな?」

「だから、誰が誰の旦那様なのですか未来的予測としてしゃらくさい事に」

 思いっきり険のある表情を酷使しながら僕はドスのきいた声で答えた。 つもりなんだけど、残念ながら僕は思いっきりハニーボイスなのだ。
 いちごは一瞬はっとしたように顔を赤らめて、ぶんぶん首を振る。

「ごめんなさい。私、昔っからそうだし、そういうものだと思ってたし。考えてみればシオって編入生だったんだ」いちごががくりと首を落とす。

「いわゆる通過儀礼ってやつでね」

 二席離れた所から爽やかに白い歯を光らせた吉田秋生が笑う。ちっくそう。今度生まれるときには身長は二メートル以上を申告しておこう。

「男子である限り、草冠のお嬢様に拘わる人間は全員、文句なしに吟味されるんだよ」

 ほお。ま、考えてみればこれだけの学校だ。下手をすると三代通っているなんて事もあるのかもしれない。でもねえ。
 僕は基本、人と会うのが好きくないのだが。この上目遣いの兎ちゃんのおどおどした表情といい、状況といい。うむむむむう。

「悪くないぜ、最高の紅茶と贅沢なおやつ、心地よい音楽。たまには本物のブルジョアとつきあっておくのも社会勉強さ」

 吉田はそう言って鼻で笑った。ラフィン・ノーズ。大昔にそんなバンドがあったような。あああ、やっぱたまには浮上しないとならんかあ。

「わかった。いつですかその呪われた時間は」

 いちごは再びバックに薔薇が咲き誇る笑顔で言った。

「午後3時ですの。寮までは使いの者に行かせます故、ご心配なく」

 もの凄く心配した僕の予感は当たるのだが、「社会生活」なんて言葉を持ち出されると、ただ一人の肉親である父親まで心配になってしまった。

「ゲームをバックアップした後なら」

「それでよろしいですわ」

 草冠いちごはクリムソン・グローリーからマッカーサー(どっちも薔薇の品種)に激変して笑った。ドルフィン・ターン。アップトリム5度速度半速。曳航パッシブソナー収納動作開始。水面下50mに付け。

 黒塗りのベンツが寮の門に着いたのは、2時27分だった。二階から見ていると、いかにも肉付きのいいどことなく外国人のような男が車から降り立った。そして寮の管理室に向かってゆく。
 僕はハッセルの片眼望遠鏡でベンツの後をターゲットに倍率を上げてゆく。個人的には僕の潜望鏡とレーダーを水面に出しているのだが。500SL?600SL?しかし、そこには何の変哲もない数字だけが描かれていた。ただひと言だけ。
「6.9」と。非常に簡潔で、全てを物語る一行。

 ギアをトップに入れてからアクセルを踏み込むと後輪が空転して白煙を噴き上げるという化け物ベンツ。およそ地上にある合法的な武器では歯が立たない世界一強靱な車体を持つ。相手を甘く見積もり過ぎていたか。

「天羽く〜ん。お客様よ。わが黎明学園は自由闊達を旨として教育方針としておりますので、よろしくね〜」

 ちょっとまて、それって自分の役割を全面否定していないか。
 仕方ないなーとは思いつつ、適当にジャケットを見繕い、ブーツカットのジーンズにクラークスのショート・ブーツ。どうせ向こうは金持ちなんだから。結果、見えています。無理しても意味ありません言葉遣いも考えないし次期当主なんて欲しくないし夢にも欲しがりませんそんなこと。
 無反響タイルの可能性に期待。パッシブ最大、アクティブソナー用意万端。


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