悦子-19
「痛いだろう」
「痛いです」
「でも気持ちいいだろう」
「でも気持ちいいです」
「感じたか?」
「感じました」
「喉にキスマークが沢山付いたぞ」
「分かっています」
「構わないのか?」
「構いますけど、付いてしまったものは仕方ありません」
「それなら付けなかったのに」
「でも付けて欲しかったのです」
「何だそれは」
「困るけれども何とか致します。それも1つの喜びですから」
「そうか。可愛いことを言うな。この肩の傷はちょっと長く残るかも知れないぞ」
「そうですね。ズキズキします」
「悪かった。夢中になってちょっと力の加減を間違えた」
「構いません」
「何をしても怒らないな。母性の権化になってしまったのか」
「そうです。私は先生の求める母性そのものなのです」
「ふん。そんなことを言うと調子に乗ってしまうぞ」
「どうぞお乗り下さい」
「もう既に君の体に乗っているんだ。この上調子にまで乗ってしまうと怖いぞ」
「私は怖くありません」
「ほほう。それじゃ遠慮なくやらせてもらうか」
「何をするのですか?」
「いいからそのままにしていなさい」
「ティッシュはありますか?」
「そのままでいい。汚れるのは僕のシーツなんだから」
「でも先生のお出しになったものが体の中から出てきます」
「仰向けになれ」
「電気を消して下さい」
「そうは行かないが、同じ状態にしてやることは出来る」
「それじゃ、その同じ状態というのにして下さい」
「では目を瞑れ」
「はい」
「何も見えないだろう」
「はい」
「電気を消したのと同じ状態になったな」
「そんな・・・」
「手を上に伸ばせ」
「何をなさるんですか?」
「調子に乗ろうとしてるんだ」
「ですから何をなさるんですか?」
「こうするんだ」
「縛っているのですか?」
「その通り」
「何故ですか? 別に抵抗したりはしませんのに」
「今に分かる」
「何か変なことをなさるのですか?」
「さあなあ。先のことまでは考えていないんだ。取りあえず縛っているだけで。今度は脚だ。拡げろ」
「そんな、そんな格好厭です。お許し下さい」
「母性の権化がゴチャゴチャ言うな」
「あれっ」
「これを大の字縛りと言う。説明の必要もないくらいそのままズバリの名前だな」
「先生、お願いですから電気を消して下さい」
「そうか。目を瞑っているだけでは不安だったな。目隠しもしてやろう」
「そんなこと言ってません」
「ほら、これで心安らかになっただろう。見えなければ電気を消したのと同じことだ」
「先生は見えているのではないですか」
「ああ、良く見えている。グチャグチャに濡れた性器がおっ開いているのも肛門の皺も良く見える」
「お願いですから、やめて下さい」
「少し黙っていろ。それとも猿ぐつわもして欲しいか? それをするとその可愛い顔が台無しになってしまうが」
「厭です」
「そうだろう。だったら少し黙っていろ」
「はい」
栄一は煌々と輝いている電灯の真下に手足を大きく拡げて縛り付けた悦子の横で、再び酒を飲み始めた。悦子の体のあちこちをじろじろ眺めているが触りはしない。触れられない方が、目の見えない悦子には不安に感じられる筈だ。案の定、5分もしない内に悦子が口を開いた。