悦子-17
「着られるさ。そういうのを着て初めておどろおどろしい世界に足を踏み入れたと言うんだ」
「そんな・・・。まさか、本気ではいらっしゃらないですよね」
「本気でいらっしゃるんだ」
「嘘です」
「本当です」
「厭です。お願いです」
「何が?」
「どうぞお許し下さい」
「話だけで興奮するな。実際に着て外を歩いてから興奮するものだ」
「死んでしまいます。そんな服を着せられたら」
「ほう。そんな服を着ると死んでしまう? それは何と言うんだろう? 腹上死ではないから服中死とでも言うのかな」
「知りません」
「まあ、服のことまでは気が回らなかったんで、それは今度の話になるが、実は下着は買ってある」
「私のですか?」
「そう」
「どんな物ですか?」
「帰る時に先生が手ずから穿かせてやる」
「何か穿きにくい物なのでしょうか?」
「そうだな。木綿のパンツのようにすんなり穿く訳には行かないな」
「ナイロンですか?」
「さあ。ナイロンも使っているのかな?」
「どんな物ですか?」
「どんな物と言われても説明が難しいな」
「何か奇妙な物ですか?」
「そうそう。奇妙な物といえば一番正確だろうな」
「どんな物なのですか?」
「まあ後の楽しみだ。それよりも跨っているだけだというのに、君の膣はゴニョゴニョと良く動くな。この間まで処女だった女だとは思えない」
「厭。又そんなこと仰って辱めようとなさる」
「辱めてはいない。褒めているんだ。こんなに良く動く膣は珍しい。わざと動かしているのか?」
「知りません。動いてなんかいません」
「動いているよ。僕の性器をさっきから締め付けている」
「知りません」
「ほら、又動いた」
「動いてません」
「あーあ、おつゆの激しいこと。これじゃあベッドが汚れてしまう」
「厭ぁ」
「そろそろ横になるか」
「知りません」
「今日は順番が逆になったが、キスマークと歯形は後でたっぷり付けてやる。体中に数え切れない程付けてやるから、楽しみにしていなさい」
「1つで結構です」
「そんなことを言うな。首から股下までたっぷりキスマークで埋め尽くしてやる」
「悪趣味」
栄一は悦子を抱きかかえてベッドの中央に移った。そのまま両手をついて上体を起こして腰を動かした。上体を起こしたのは悦子の顔を良く見ながらセックスしてやろうと思ったからだ。悦子は栄一の両腕を掴んで目を瞑っている。
「そんな所を掴まないで僕の体を抱くんだ。背中でも腰でもいい、両手で抱きしめてみろ」
「・・・」
「そうだ。それでちょっと眼を開けてごらん」
「・・・」
恥ずかしそうにうっすら開けた悦子の眼を覗き込んで栄一はニヤリと笑った。悦子も笑い返して直ぐに又目を閉じてしまった。
「僕はこのまま君の表情を観察しながらやるんだから、大いに悶えて乱れて僕の眼を楽しませてくれなければいけないぞ」
「アァ」
「そうだ。声も盛大に出してくれ。此処は安普請じゃないから声が隣に聞かれる心配は要らない。それではつまらないというんなら窓を開けてもいいぞ」
「厭」
「カラオケ・ボックスでセックスして、女のあえぎ声をマイクで流したという猛者がいるそうだけども、それはちょっと悪趣味だなあ。僕でも其処まではやりたくない」
「・・・」
「でも君がそうしたいと言うんなら敢えてそういうことをしてもいいぞ」
「厭です、そんなの」