る-6
会うために努力をして
兄貴に近い自分になれるように常に気を張る。
一言一言、嫌われないか心配で
由布子さんが、兄貴を思い出して泣かないように優しく包む存在でありたい。
そして、兄貴を思い出させるような言葉を慎重に選んで口にはしなかった。
努力しても努力しても足りないような気がする。
こんな危うい関係を、新田は快く思っていなくて
それはそのまま由布子さんを快く思っていない感情にシフトされた。
「いいんだよ。俺今まで女のために頑張ることなんかなかったからな」
「・・・・」
「この状態も、嬉しいんだ」
そんな俺の言葉に納得できないような顔をして
それでもそれ以上は何も言わない。
デートで笑ってくれる由布子さんの顔が見たくて頑張るくせに
その笑顔を見ると苦しくなる。
恋ってこんなに苦しかったっけ?
それでも手放せない人との時間は何よりも大事でかけがえがなくて。
このオンナより大事なオンナなんか生涯いないとさえ思える。
俺の幸せは
由布子さんへの執着心と
自分自身の嫌悪感と
兄貴への罪悪感のトライアングルの中で
微妙なバランスの中、ゆらゆらと揺らめいていた・・・