妙子2-7
「研はホステスは口説かないの? ホステスは嫌いなの?」
「ホステスだってソープ嬢だって好きになれば口説く」
「本当?」
「ホステスだって立派な職業だ。別に卑屈になることはない。ホステスなんて口説かんという男もいるだろうが、そんなのは相手にしなければいいんだ」
「でも指名されたら相手にしない訳にいかないよ」
「だからお客として接待してればいいだけの話だ。大体お前、男に口説かれたくてホステスやってる訳じゃないだろ?」
「うん、そうなんだけど」
「やっぱり口説かれたいという気が多少あるのか? 口説いてくれると女として認められたような気がするのか?」
「そうじゃないんだけど、久美ちゃんが言ってたから」
「何て?」
「ホステスなんてお客さんに口説かれるようでなければ駄目よって」
「それはまあ、そうも言えるな」
「どっちなの?」
「どっちとは?」
「だから口説かれないといけないの? 口説かれなくてもいいの?」
「口説かれてもいいし、口説かれなくてもいい」
「それじゃ、どっちでもいいんじゃない」
「ああ、そうだ」
「それなら楽だ」
「そんなこと悩んでたのか」
「うん」
「お前は馬鹿だな」
「うん。馬鹿なの」
「俺が馬鹿と言ったのは可愛いという意味で言ったんだ。もっと自分に自信を持て」
「うん。有難う」
「あそこを歩いているスラッとした女は誰だ?」
「あれが今言った久美ちゃん。いつもナンバー1なのよ」
「なるほど。あれが久美という女か」
「私の友達だよ。呼ぶ?」
「いや、いい」
「そうね。久美ちゃんと話したいならお店の外の方がいい」
「外?」
「売れっ子だから折角指名しても直ぐにいなくなるから」
「それで外の方がいいというのはデートするという意味か?」
「デートっていう程でもないけど、私、久美ちゃんと仲良しなの」
「そうか」
「年は久美ちゃんの方が3つ上なんだけど仲良しで、良く一緒に食事するのよ」
「ほう。だから?」
「だから、その時呼んで上げる」
「そこまでして会いたいとも思わない」
「だってそうすれば食事代が助かるから」
「ちゃっかりしてるな」
「その代わりナンバー1の久美ちゃんとゆっくり話が出来るよ」
「まあそうだな」
「久美ちゃんって話が上手で若い人から年よりまで誰とでも話が弾むの」
「ほう」
「それに、お店だとみんなバッチリお化粧してるし、こんな照明でしょ? だから誰でも美人に見えちゃうけど、外で会えば久美ちゃんは本当の美人なんだって良く分かるよ」
「お前人の事ばかり言ってるな」
「人の事って?」
「偶にナンバー3になる妙子とゆっくり喋れるということを忘れている」
「あそうか。私ともゆっくり喋れる」
「それなら今度一緒に食事するか」
「うん」