妙子2-26
「それなら又伸ばすかな」
「うん。伸ばして」
「あれっ、お前珍しく飲んでるじゃないか。それはウーロン茶か?」
「違うよ。ウィスキーだよ」
「飲めるのか?」
「だって研と別れてから毎日飲んでたんだもん」
「何で?」
「だって酔っぱらわなきゃいられなかったんだもん」
「飲めないのに酔うか?」
「飲めば酔うに決まってるじゃない」
「いや。普通飲めない奴が無理して飲んでも酔う前に戻してしまうもんなんだ」
「毎日戻してたよ」
「そんなにしてまで飲むことも無いだろう」
「死にたくて無茶苦茶やってたの」
「酒を飲んだって死にはしないだろうよ」
「うん。でも酔えば寝られるから」
「そんなに悩んだのか」
「悩んだよ」
「あの時俺の言うことを冷静に聞いてれば悩む必要もなかったんだ」
「冷静に聞いてなんかいられなかったよ。相手は久美ちゃんなんだもん」
「そりゃまあ、友達に手を出したと思えば腹も立つわな」
「そうじゃないよ」
「そうじゃないとは?」
「相手が久美ちゃんでは歯が立たないからよ」
「女としての魅力の事を言ってるのか?」
「うん」
「それは誤解だぞ」
「でも私の方が久美ちゃんより魅力があるなんて誰も言わないよ」
「そうとは限らない。どっちが美人かと聞かれれば誰でも久美だと言うだろうが、どっちが魅力的かというのは別だ。それはどっちが好きかというのと同じことだからな」
「それじゃ研は私の方が久美ちゃんより好きで魅力があると思うの?」
「思うよ」
「本当?」
「本当だ」
「私の方が久美ちゃんより魅力があるの?」
「ああ。俺はそう思う」
「涙が出て来ちゃった」
「出てない。笑ってんじゃないか」
「あそこから涙が出てきたの」
「馬鹿。女はそういう冗談を言わなくてもいいんだ」
「はい。だけど冗談じゃなくて濡れちゃったの、今。こんなことって初めて」
「何? それじゃ本当かどうか確認するから脚を広げろ」
「え? こんな所で触るの?」
「下着の上からちょっと触るだけだ」
「ちょっとだけよ」
「おっ。本当に濡れてるじゃないか」
「うん、だから本当」
「厭らしくて可愛い奴だな」
「有難う。研の為にうんと厭らしくて可愛い女になるから」
「そうだな。それにしても何か変な手触りだったけど、どんな下着穿いてんだ?」
「ガードル穿いてんの」
「ガードル?」
「太っちゃったから」
「それはいかんな」
「ガードルは嫌い?」
「俺は何でもセクシーなのが好きなんだ」
「ガードルだってセクシーなのはあるよ」
「そうか?」
「うん。透けて見えるような奴とか」
「そうか。それじゃガードル穿く時はそういうのにしてくれ」
「色は?」
「色はまあ何でもいいけど、やっぱり赤とか黒がいいかな」
「紫は?」
「紫でもいいけど、紫が好きなのか?」
「ううん。そうでもないけど昨日紫の買ったから」
「紫で透けてる?」
「少し」
「少しじゃなくてまるっきり透けてるのにしろ」
「うん。今度買う時はそうする」
「久しぶりに再会したんだ。今日はお前の好きな寿司を喰わせてやる」
「嬉しい」