妙子2-19
「コッテリした物ばかりだな。まあそれもその内食べさせてやる」
「うん。有難う」
「有難うは食べさせて貰ってから言えばいいんだ」
「うん」
「今日のところは焼き肉にしておこう」
「焼き肉もコッテリしてるんじゃないの?」
「そうだけど、すぐ側に焼き肉屋があったから」
「うん。あそこは美味しいよ。焼き肉なら毎日でもいい。大好きだから」
「肉ばっか喰ってると太るぞ」
「ちょっと待って。着替えるから」
「それでいい。すぐそばなんだ」
「でもタイツがいいと言ったじゃない」
「お前は可愛い奴だな。俺の言ったこといちいち本当に覚えてるな」
「いけないの?」
「いや。女はそうでなきゃいかん。だけど直ぐそこに行くのに着替えることもない」
「それじゃ行こうか」
「だけど、口紅くらい付けたらどうだ?」
「ア、そうか。ご免ね。ねえ」
「俺は化粧ゴッテリっていうのが好きなんだ」
「ゴッテリお化粧する?」
「いや。今はいい」
「ねえ」
「何だ」
「結婚してくれる?」
「結婚?」
「あっ、厭ならいいの。一緒に住んでくれるだけで」
「別に厭ということは無いけど、お前俺の仕事知ってるだろ」
「うん。ヤクザでしょ」
「あのな。経済ヤクザと言ってくれ」
「経済ヤクザ?」
「ああ。ヤクザはヤクザでもそこらのヤクザと違って一応頭使ってんだ。頭使ってビジネスマン相手に仕事してる」
「頭がいいんだ」
「そうでもないが、喧嘩自慢の馬鹿ではないと言いたいんだ」
「そしたら経済ヤクザでいいから結婚してくれる?」
「だからお前が結婚したいと言うんならそれでもいいけど、俺は何時死ぬか分からんぞ」
「え? エイズか何か?」
「馬鹿。経済ヤクザと言ってもヤクザに違いは無いから何時命を落とすことになるか分からんと言ってるんだ」
「それでもいいから」
「何? 俺が死んでもいいのか?」
「ううん。死んだら厭だけど、何時死ぬか分からなくても結婚して欲しい」
「何で? 何で俺と結婚したいんだ?」
「好きだから」
「好きだから結婚か」
「うん」
「お前は単純でいいな」
「やっぱり結婚は厭?」
「厭ということもない」
「それじゃ結婚してくれる?」
「お前がそれほど結婚したいと言うんなら」
「うん、したい」
「それじゃ、その内な」
「うん。有難う」
「それは結婚してから言えばいいんだ」
「うん」
「俺はハツとキムチとナムルがあればいい。あとはお前が適当に好きな物を注文してくれ」
「うん。レバサシ頼んでもいい?」
「ああ」
「ユッケも頼んでいいかな」
「だから何でも好きなだけ注文すればいい」
「研て優しいね」
「何でだ?」
「ううん。何となく」
「好きなだけ注文していいと言ったから優しいと思うのか」
「そうじゃなくて全体にだよ」
「そうか」