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灰色の愛
【家族 その他小説】

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灰色の愛-3

━神様は、いじわるね。

本当に、漫画の通りにしちゃうつもりなの?


そんなのあたしが、許さない。


「灰璃!!」
どんっ

突然思いきりの力で押され、道の脇に突き飛ばされた。
「藍琉何すん━」
藍琉は、笑っていた。

ドンッ…





「この度はご愁傷様でした…。」
黒い喪服を着た人々で、片桐家は一杯だった。

藍琉が死んだ。

二日前藍琉は、灰璃の後ろから迫っていた居眠り運転の車に轢かれ、ほぼ即死状態でこの世を去った。
藍琉が死んでから灰璃の目は虚ろで、何も見ようとしない。
ただ一点を見つめるばかりだ。

あの時、灰璃の頭には藍琉の声が聞こえた。
灰璃が死んだら自分は生きてはいけないが、自分が死んでも灰璃なら生きていけるはず、と。

虚ろな目から涙がこぼれた。
藍琉が思っていたほど、自分は強くない。
藍琉が、自分の半身が死んで生きていられるほど、自分は器用じゃない。

藍琉が死んでしまったのなら、自分も死んでしまいたい。

━…灰璃。

声。
藍琉の声が聞こえた。頭に直接訴えかけてくるような声が。

━…あたしは、ここにいるから。

灰璃の目の前に、藍琉が現れた。
穏やかな笑みを浮かべた藍琉は、ゆっくりと近づいてくる。
冷たい空気が灰璃の頬に触れ、全身を包む。

「…灰璃?どうしたの?」
二日前から無表情だった息子が笑っている。虚ろな眼差しを天に向けて。
「藍琉…。」
母は涙が溢れた。
口を両手で塞ぎ、溢れ出る涙に肩を震わせた。
「灰璃…ッ、藍琉がッ…見えるの…?」
「藍琉はここにいるじゃないか、母さん…。」
誰もいない空間を、灰璃は優しく包み込むようにして抱きしめた。
「ずっと一緒だよ、藍琉…。」




それから一週間して、灰璃も眠るように死んでいった。
腕には見えない誰かを抱き、虚ろな瞳には最愛の姉を写して…。


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