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灰色の愛
【家族 その他小説】

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灰色の愛-2

「だって、藍琉はいつも俺に何も話してくれない。双子だってのに、俺は藍琉が全然わからないよ。」
灰璃が寂しそうに呟く。
「…なんか、あたしらって某人気野球漫画の双子みたいだよね。出来の良い弟と、良いところぜぇ〜んぶ弟にとられた姉?」
「…んだよそれ。俺、出来が良い訳じゃないし。それに、藍琉だってやれば俺より良いはずだろ?」
「それでもあたしはやらないから劣等生で、ハイリは努力してるから優等生。やっぱり、出来が違うのよ。」
藍琉もゆっくりと帰り支度を始めた。
灰璃は、入り口付近で俯いたまま動かない。
「ほらハイリ。オネイチャンと帰ろっか。」
「…藍琉は、俺が死ねばいいと思ってる?」
「…え?」
思いがけない灰璃の言葉に耳を疑う藍琉。
「なんでそうなる。」
「だって、俺たちあの漫画の双子みたいなんだろ?じゃあ弟は死ぬじゃないか!」
「だからどうしてそうなるかな?」
「だって…、だって…」
とうとう泣き出してしまった灰璃。
透明の滴が、頬を伝ってパタパタと床に落下していく。
「死ねばいいなんて、思ってるわけないでしょ?バ灰璃。あたしがそう思ってると思った?」
「うん。」
「馬鹿弟。」
俯く灰璃の頭をぽんっと叩く。

━あたしが、そんなこと思うわけないじゃない。
あたし達は二人で一つ。どちらが欠けても生きていけないんだから…。

自分の半身は灰璃。
一生灰璃一人だけ。
灰璃が、自分の良い部分を全部持っているなら、自分は灰璃の悪い部分を全部持っていてあげる。

自分は灰璃で、灰璃は自分。
誰にも切れない、永遠の絆…。


藍琉は灰璃を異常なまでに愛している。
家族愛とか、恋愛感情とか、そんな言葉では表せないくらいの、愛。

『愛』という独占欲…。



「藍琉、雨好きだったのに残念だな、梅雨明けして。」
灰璃が空を見上げて、灰色をした煙の壁の向こうに隠れる青に、目を凝らした。
「そう、ね。」
藍琉が同じように空を見上げ、ゆっくりと目を閉じた。

藍琉達が生まれたときも雨だった。
そのせいだろうか、雨の匂いは藍琉に灰璃を思い浮かばせる。
頭の中に、自分の中に灰璃がいる。
藍琉の心の安らぎ。それは、灰璃が自分の側にいること。
雨の匂いで心が安らぐと感じていた藍琉。
灰璃を思い浮かばせる雨の匂いは、それと同時に灰璃が側にいるという錯覚も与えていたのだ。



「ハイリィ…。」
「何回言えばわかんだよ…。俺はハイリじゃないって…」
「あたし達、ずっと一緒だよね?」
生まれてから17年一緒に暮らしてきた藍琉が初めて見せる悲しそうな瞳。
灰璃は、胸が締め付けられるような感情に苛まれた。
「ばっ…、…かじゃないのか…。そんなの、当たり前じゃないか。」
その灰璃の言葉を聞き、藍琉がふっと笑った。
「…そっ、…か。」
藍琉は、灰璃が自分と一緒にいることを当たり前に思ってくれていることが、何よりも嬉しかった。
「灰…」
灰璃の方に向き返った瞬間目に飛び込んできた鉄の塊。
「藍琉?」
一瞬にして強ばった藍琉の表情に、灰璃は首を傾げる。


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