ハンマー-1
執拗にマーカズはアリサの臍をえぐっている。
「気持ちいいかいアリサ、仲間になれば毎日だってしてあげるよ」
「くうっ、くたばりやがれ、ううっ」
マーカズは大袈裟に肩をすくめ、臍弄りをやめて椅子の方へ戻った。
「とどめを刺してあげなさい」
次の男はマスクの男よりさらにでかかった。
いや人間ではない。緑色の肌をした怪物トロールだ。
のしっのしっと重量感あふれる歩みで彼女の前に立ち塞がったトロールは、手に鋼鉄製の巨大ハンマーを持っていた。
驚愕に目を見開くアリサ。
「や、やめろ、そんなもんで殴ったら……」
「どうしました。さっきまでの余裕は」
トロールは巨大ハンマーを振り上げた、そこでマーカズが手でストップをかけ、
「さあ最後だ。私の軍門に下るか、仲間の居場所を吐きなさい。アリサ!」
アリサは顔を青くしながらも、無理に笑って言った。
「死んでもごめんだ」
ごおっ!
風を切ってハンマーは振り下ろされた。
ずぶううううう!!!
深々とアリサの腹筋に、鋼鉄が食い込んだ。
「おうげええええええええええっっ!!!!!!!」
巨大なハンマーに押し潰され、彼女の腹部は鉄の中に完全に埋没していた。
完全に腹筋は崩壊し、内蔵も潰れただろう。
口から胃液と血反吐を嘔吐し、びくっびくっと全身を痙攣させるアリサ。
「回復班!!!」
マーカズが指を鳴らすと、白いローブを着た男たちが部屋に入ってきた。
「すぐに治癒魔法をかけろ。絶対に死なすな。傷一つない体に戻すんだ」
そう言うと、マーカズは三人の男と一匹の怪物を引き連れて部屋を後にした。