た-2
「俺も主任になったんだ。そろそろ由布子さんも前へ進まないか?」
「・・・・」
「俺と・・・本気で付き合ってくれないかな?」
「・・・・」
そっとワイングラスをテーブルの端によける。
由布子さんが何にも逃げ道がないように、2人の間に何も置きたくない。
「それは・・・」
「それは?」
「まだ考えられないって言うか」
言葉で逃げる由布子さんを言葉で捕まえる。
「俺はいつまで待てばいい訳?」
「・・・・」
「それとも、1ミリも俺に可能性がないなら
もう、こうやって会うのは辞めたいんだ」
俺のその言葉に下を向いて目を合わせなかった由布子さんの顔がハッとあがる。
「もう・・・会わないって、事?」
「1ミリも可能性がないのなら」
「・・・・」
「由布子さんは、俺に何を求めてるの?」
「何・・・って」
「アイツがいなくなった寂しい気持を紛らわすため?」
「アイツなんて、言わないで」
「言いたくもなるだろうが!」
「・・・・」
俺はほんの少し声を荒げた。
この話は2人きりでしたくない。
感情に任せて、自分の気持ちを一方的にぶつけることだけはしたくない。
だから・・・
だから、人目の多いレストランで話そうと決めていた。