信頼-1
それは気持ちが沈んでいた雨の日の出来事だった。
「大丈夫?」
「っ!?」
その人は見ず知らずの私に傘を差しだしてくれた。
「雨、夜まで降るみたい。」
「そう、ですね…。」
その人だって勉強やら部活で時間も体力もないかもしれないのに私何かを助けてくれて。
「じゃ、僕はここで!」
「あ……。」
まんべんの笑みでそう言いながらも反対方向へと走っていく彼。
私の恋はそこから始まった、優しくて近くに居るとホッとする。出来る事なら距離を縮めて仲良くなり、それから告白をし、毎日のように一緒に肩を並べる仲に…。
けどそれは永遠に叶わない夢と分かってしまった、と言っても単純に私が好きになったその人には既に恋人が居た。
だから私は諦めた、とても悔しいとても悲しい、……けど仕方がない。
正直食い下がる事だって出来た、けどそれは絶対にしないと決意したんだ。
……それなのに、運命の悪戯と言う奴は実に残酷だ。
「いらっしゃいませー!」
紹介されたバイト先にまさかの彼、小鳥遊先輩が居た…。