重なる松の葉、水上に掛かる橋-1
「ねえ、同じことを連続でしてもつまらないじゃない。」
「…してくれないんですか?」
「同じことを、って言ってるでしょ。仰向けに浮いて足を開いて。」
今一つ納得していない様子で言われた通りにする彩乃。
「そう。そのまま動かないでよ。」
私は彩乃の足元に移動して彼女の右の足を掴かみ、自分も浮いた。
「足?」
「いいから。」
彩乃の右足を引き寄せた。彼女の足は私の股間の上を滑るように通り過ぎ、胸の上まで来た。同時に、私の右足も彩乃の股間の上を通って彼女の胸の上まで行った。二人の両足は、松の葉っぱを向かい合わせにしたような形で絡み合った。
「何を…」
「こうするの。」
彩乃の右足をグイっと引いた。
「え!」
二人の足の付け根同士が触れ合った。そこはもちろん、女にとってもっとも敏感な部分だ。
「沙楽先輩、これって…。」
「そういうこと。」
意図を察したのか、彩乃は私の右足を掴んだ。
「行くよ、彩乃。」
「は、はい、沙楽先輩。」
グイ。
「あうぅ…。」
先に声を漏らしたのは不覚にも私だった。彩乃の下の唇が私の同じ部分にグチュリ、と吸い付いた瞬間、下腹部に熱い快感が暴発してしまったのだ。一回終わってる彩乃に対し、私はまだ猛烈に疼いている真っ最中なのだから。
それを見た彩乃が調子づいたように言った。
「こう、とか。」
私の足を引きつつ、腰を前後に揺らしてきた。
「う、ちょ、ちょっとぉ、彩乃、そんなことされたら、私…」
激しく擦れ合う下の唇と唇。快感がジンジンと下腹部に響き、染みて来る。
「わ、私だって…くふうっ…。」
彩乃も感じ始めた。
二人は互いの足を抱きしめる様に抱え込み、引き付けて腰を動かした。前後に、左右に、グルグルと。自分の敏感な所を相手の同じ部分に擦り付ける為に。
「はぁうぅう…。」
彩乃が悦楽の階段を駆け上がっていく。私も負けじと追いかけた。
「くはっ…あはうぅ…。」
彩乃が切なげな目を私に向けた。
「沙楽先輩、私、もう…」
「ダメよ、まだまだこんなもんじゃ許さない。」
「でもぉ…」
私は彩乃の右足の親指に噛みついた。
「あっ!痛い、痛いじゃないですか!」
「ふふ、これで少しは長持ちするでしょ。それそれぇ!」
足に噛みついたまま、乱暴に腰を振り回した。お互いの柔らかい部分が熱を帯びてグチュグチュと粘り付き、絡み合っているのがはっきりと分かる。
「ああっ!噛みながらだなんて…なんて酷いことを…もっとして下さい!」
「あらそう?」
ガプ。
「あふぅん…」
「ていうか、私もそろそろヤバげな…。」
ガップリ。
「おほぅん…」
彩乃に噛まれた。
二人は、遠くなりそうな意識を互いの歯で引き止め合いながら水面で体をくねらせ続けた。
しかし、いつまでも耐えられるはずはなく。
「あ、あ、ああー、あうぅ…」
「はぅ…う、う、うはぁ…」
ひときわ大きな快感の波が全身を痺れさせた。
「先輩、あはあうぅ…、沙楽先輩ぃ!」
「う、うぅ、彩乃、ああ、彩乃!」
ビーン。
二人は同時に反り返り、スーパームーンに照らされたプールの水面上に扇型の橋を架けた。
ブクブクブク…。
絡み合ったまま沈んでいく。水面が遠く暗くなっていく。
マズい…。
微かに残った意識でそう思った私は、もう一度彩乃の足の親指に容赦なく噛みついた。
ゴボ…。
息の漏れる音が聞こえた。続いて。
ガバハァ。
噛み返された私も息を漏らした。
急いで手で水を掻いて浮上した。
ザパァ…。
「はあ…、はあ…、ちょっと、はあ…、危なかったわね。」
「はあ…、だいぶ、はあ…、危なかったと、はあ…、思いますよ。」
足を絡め合って浮いたまま、二人は苦笑いを浮かべた。
「ねえ、沙楽先輩。」
「ん?なあに、彩乃。」
「月が…綺麗ですね。」
満天の星空の中に、巨大な月が君臨していた。
「…そうね。」
彩乃は、何かを感じ取ったかのように私の右の太腿に手を乗せた。
「どうかしたんですか?なんだか寂しそうですよ。」
私は無言で彼女の手に自分の掌を重ねた。
穏やかな光の波が、水面に揺れていた。