二つのロケット-2
「その前に一つ、条件を言ってもいいですか。」
「これ以上他にオンナを作るな、かしら。」
「それはもちろん、そうですけど…。」
なんだかモジモジしている。
『もちろん、それもですけど…。』
志歩先輩と一緒にいるためには、どうしてもしておかなければならないことがある。
「沙楽先輩、志歩先輩に全てを見られ、身を委ねてましたよね。」
「ええ、そうよ。」
ギュっと両手を握りしめ、顔を真っ赤にして彩乃は言った。
「わ、私、まだなんですけど!まだ先輩に全てを…。」
「だってあなた、この前丘の上で…」
「そ、そ、それはそうですけど…。あまりにも衝撃が強かったんですよ。女の人を好きになったのも、キスをしたのも、あんな所を触られたのも初めてだったから…。」
「そうね。無理もないわ。実は私も一瞬で…。」
「え…。それなのにあんなに爆笑したんですか?あなた可愛すぎる、とか言って。」
「同じだったからよ。一年前の自分を思い出してしまったの。ごめんね。」
「あ、いえ…。」
見つめ合った二人の瞳に、自然な笑みが浮かんだ。
「ね、」
私は視線でベンチを示した。
「ハサミとピンセット、用意してあるんだけど。」
「外ですよ!?ここ。」
「二人っきりじゃない。」
「月、けっこう明るいですよ?校舎の高い階からだと見えますよ?」
「こんな時間に誰もいないわよ。」
「でも…。」
彩乃は渋ってる。
「私もここだったんだけどなー。志歩先輩の…」
「やります。」
自分からベンチに向かって歩き出した。
「さあどうぞ、こちらへ。」
「痛くしないでね。そしてそれが済んだら…。」
私はベンチに仰向けになり、左膝を抱え上げた。