別荘での戦い-7
「んっ!…れんっ!蓮!」
「…うーんここは?」
気が付くと僕はベットの上に居た、そしてその隣には僕の想い人が。
「巴…。」
「っ!良かった、気が付いて。」
心の奥からホッとしたように笑みを浮かべる彼女。
「どう、して…。」
「…あの後必死に探したのよ、そしたら山に真新しそうな足跡に見慣れた帽子が落ちてたから。」
彼女が持ち上げた物は僕がこの日に被っていた青い帽子だ。どうやら自己嫌悪にでも陥って帽子が落ちた事にも気が付かなかったのだろう。
「僕、本当に最低だ…。」
「蓮…。」
彼女の忘れようとする努力を無駄にし、彼氏さんを不快にさせ、挙句心配かけ手間を取らせて。
「うっ……ひっく。」
もう、自分が情けなく情けなくてもう。
「巴、……ごめん、本当に。」
「……。」
涙で視界がぼやける。
「せ…かく…きみ…が、忘れようと…努力…して、たのに、こんな…。」
彼氏さんはこの部屋には居ないみたいだ。
あまりにも情けなく、そして弱弱しく泣く僕。そんな僕に彼女はようやく重い口を開きだした。
「嬉しかったよ。」
「え?」
「電話をくれた時。」
「でも。」
「私は嘘が苦手な人間でね、だからはっきり言う、今朝は誘ってくれて良かった。」
「それって。」
「あぁやっぱり蓮も私と同じ気持ちなんだって。」
未練があり、それでも打ち消そうとした訳では。
「じゃー君も、いたた。」
転落した時、肩を思いっきり打ったようで。
「まずは治療が先ね、ちょっと待ってて別荘にも救急箱が備え付けられているみたい。」
「……。」
そう言って彼女は傷薬のある居間へ向かう為、部屋をでる。
巴…。
複雑な思いを抱いているであろうその足取りで廊下を歩く。
「おい。」
「?…きゃっ!」