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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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別荘での戦い-6

「はぁ…はぁ。」

僕は今山中へ居る。と言うのも彼女の為に…。

「あいつは追い払うわ。」
「俺とお前は恋人何だから。」

その通りだ、僕は本当に邪魔者で…、あの時スッパリと別れ、それからは彼女の幸せを今後の恋の実りを陰ながら応援していた。それなのにそんな想いとは裏腹にこうして元カノとその新しい恋人が二人きりで楽しいデートを今後の実りある豊かな人生を歩もうとしているのに…。

「バッカじゃないのっ!?」
「私とアンタはとうのとっくに別れたのよっ!」

最早反論すらない、それこそ正論だ。きっぱり別れておいてここにきてそんな二人の間に元カレが入り込む何て、本当に前代未聞だ。

山を登り右と左と首を動かしあるものを探す、あぁ虫がしつこい辺りをたかる。

正直あの電話は当然の如くダメ元だ、バッカじゃないのっ!?…そう怒鳴られた時点でもう終わったと思った、呆れて電話を切られたら、もう後は頑張って割り切って恋より友情に移す、事の発端を作った風馬君に報告して気晴らしに二人でどっかで掛けようと。

けど、その怒号の後から意外な返答があって。

「…しょうがないなぁー。」
「え…。」

電話越しのその声はとても気だるそうでホント言葉通りにも受け取れる、でも。あの巴が僕にしつこくされたくらいで折れる筈もない、するとある可能性、いや希望が見えてきてしまう。

彼女も僕と同じ想いだって事を…。

けどそうなると障害として立ちはだかるのがあの黒崎って人だ、彼女の新しい恋人。

本来であれば彼は僕にとっても良い存在な筈、なんせ彼女を幸せにしてくれるのだから、バス停で会った時から時間が空けば宜しくの一言を言っても良いくらいだ。

でも、バスに乗って、別荘に到着し、バーベキューの準備でも彼と二人きりになっても中々言い出せず。

僕は知っての通り人見知り何てしない、だからいくら会った事もない人だからって話しかける事が困難な訳でもなかった。

言い出せないんじゃない、言いたくなかったんだ。

もしそれを彼に言ったら、僕は…僕は恐らく一生後悔する、彼女からの予想外のオーケーを無駄にしてはいけない、自ら最後のチャンスを閉じる必要何てどこにもない。

だから僕は僕なりに彼女に振り向いてもらおうと色々と話しかけたりして。

「…ありがと、ただの召使い。」
「お前は俺の彼女だろっ!」

ラストチャンスと思い、必死に頑張った…巴はあのムチャな要求に答えてくれたのは僕にまだ気があるから、彼女も僕と同じできっと別れて後悔している、そう希望を感じて。

…けどそんなものは単に希望推測だったと。

僕は本当に最低だ…。彼女は僕の事を想ってキッパリと別れ話を持ち掛け、何とかそれに応じようやく新しい良い人生を黒崎君と迎えようとしてるのに、二人の間に割り込んで、オーケーしてくれたからってそれ=まだ気がある⇒頑張ればよりを戻してくれる…。

あまりにも勝手だ、自分に都合の良いように考えた結果がこれだ。僕はしっかりと聞こえていた建物陰で二人が揉めてた事を。

巴がオーケーをくれたのは別れた事を心の奥底では後悔しているからじゃない、ただ単に未練が残っていただけだ。

言うなれば楽しい正月帰省を終えて、寂しいけど名残惜しいけどそこはぐっと堪えて普段の辛い仕事に戻る…。僕のした事はそんな人に甘い誘惑で楽しい正月に出戻りをさせ人生を滅茶苦茶にしたのだ。

やっとの思いで僕との想い出を忘れる事が出来たのに、それをあの電話で台無しにし、更にはそこから動揺しそんな彼女を見て本来彼女を大事に思ってくれる黒崎君にまであんなにも不快な思いをさせて。

死にたい、いっそ殺して欲しい…、二人を傷つけたとして死刑…にでもなりたい。

けどそんなのは駄目だ、万が一本気でそんな事をしてみろ、きっと彼女は巴は一生後悔する、彼女をこれ以上僕のせいで傷つけない為にも逃げちゃダメなんだ、逃げちゃ…。

前を向いて胸張って生きていかないと、いけないんだ。

「リスさーん、どーこでぇーすかぁー?」

二人に内緒でこっそり邪魔者は退散する。けど手ぶらで帰りたくはない。彼女は先ほど山のリスを観たいと言っていた、だったらせめてそれを見つけて写真に収めそれを彼女に届けよう、無論写真何か撮ったって何も意味はない、これは僕がやりたいだけだ、憧れのリスの写真を添えそこに謝罪メールを送る。

君らは何も悪くない、悪いのは全部僕だ。今日は本当にゴメン、僕はもう二度と君らの前に現れない、今度こそ本当にさようなら彼と幸せに…と。

「ん?……あっ、あれはっ!」

愚か者に神がお情けをくれたように、そのお目当てのリスが木の上に居て。

「よーし!そこを動くなぁーじっとして。」

そのリスは逃げる気配もなくただひたすらにつぶらな瞳で好物のどんぐりを両手に持っていて。

これで、終わる…。

そう油断したその時。

「あっ!」

案の定足を滑らせ崖へと転落してしまった。

リスはその衝撃で驚いて逃げてしまい…。

……

あぁ

最早立ち上がる気力もない。

転落しても割と嫌な気持ちはない、むしろ気持ちが良かった。

…もうこのまま山の亡霊にでもなりたい。

もう、僕なんて…。



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