別荘での戦い-5
それは昨日の夜の出来事だった。
「えっ?巴と、その恋人さんが…。」
自室でボーとしていた僕の元に掛かってきた一本の電話、それは他でもない親友の風馬君からだった。
巴とその恋人さんが別荘にデートをしに行く、その情報源は彼からだった…、まぁ最も正確に言えば巴と普段から行動を共にしている柊さんから相談を受けて、そこから知った訳だが。
「…情報提供ありがとう、でも僕にはもう関係ない事だから…。」
そうだ、僕と巴は別れたんだ、あの日あの公園で…お互いの今後の事を想って。
「でも…。」
「風馬だってこの前の男子会と題してあたると三人でラーメン食ってる時に言ってくれなかったっけ?もう恋何てしない今後は恋より友情を選ぶって。」
「……。」
あの男の固い友情は何処行った…。
「確かに、君がそれで幸せならそれで良いんだ。」
「なら…。」
「でも本当はそうじゃないんじゃない?」
「えっ、そうじゃないって…。」
「やっぱ自分じゃ気づいてないんだね。」
何の話?
「君は未だ未練があるんだよ、彼女に対して。」
それを言われハッとする、稲妻が横切るように。
「そっ!そんな事は…。」
「だったらどうして伊吹さんを教室で見かけるなりジーと見てるの?」
柊さんと彼女が普段通り楽しそうに会話をする、その横顔。
確かにそれを無意識のうちにずっと見ていて、その度に、でそんな僕の寂しそうな横顔を今度は親友の風馬君が見て、いや気づいたって訳か。
「よく見てるね、君は。」
「当然だよ、親友なんだからさ。」
やっぱ優しい子ね。
「ありがとね、それでも結果は何も変わらないよ、僕が未練があるのはある意味当然だしでもそんなのしばらくすれば消える、それこそ君やあたると過ごしていればそんな感情何て…。」
「そうかなー、まっ僕個人で言わせてもらえばやっぱ君と伊吹さんはお似合いのカップルだよ、きっと別れるべきではないんだ。」
「まぁーそれはホント個人的だよね。」
「そうだよねゴメン、君は君なりに割り切ってる最中かもしれないのにこんな。」
風馬君…。
「けどそれでも君が彼女を見つめるあの目はただ単に別れて未練があるだけのようには見えない。」
「…本当は別れるべきではないと?」
「そこから先は君次第でしょう、けどもしまだ引っかかる事があるなら黙って見つめてないでやれる事はやった方が良いって事さ。」
僕は、僕は…。
「まっ!伝える事は伝えた、後は君次第だよ、明日君が行動に移そうが移さなかろうが僕はどっちでも良い、それが君が必死に考えた答えなんだから…、本当に恋は諦めたのならもうこれ以上何も言わない、親友としてずっと君の傍にいる、けどもし僕の考えが正しくて後悔してたのなら、僕は全力で応援する。」
何と心強い…、ちょっと涙が出てきた。