別荘での戦い-3
俺は彼女にナイフのように鋭い視線を投げつける。
「巴…。」
「しょうがないでしょ!?あまりにしつこく食い下がるもんだから。」
アイツの出現のせいで自然もバーベキューも台無しに。肉が急に不味く感じて仕方がない
それからというものの会話らしい会話はなく、ひたすら重たい空気が流れ。
肉や野菜が焼ける音だけがただただ虚しく鳴り響き。
本来であれば巴と二人っきりで楽しいひと時を過ごす筈だったのに、コイツのせいで!
…あり得ないだろ、もうとうのとっくに別れたくせに今更、……きっとまだ彼女に対して未練があるのだろう、一度キッパリと別れたと話してたのに、そりゃ巴はとても魅力的な奴だ、スタイルもよくサバサバしていて裏表もなく。
別れて悲しくてこうやって往生際悪く金魚の糞みたいについて行きたい気持ちも分からないでもないけど、だからって…。巴を困らせて良いのかよ。
「お茶飲むー?」
「……。」
奴の申し出に何を言うでもなく固い表情でコップを差し出す巴、幸い彼女も同じ気持ちのようで、一安心だ。
けど、そりゃ一番悪いのはコイツだ。でもこんな奴を招き入れた巴も悪い。仕方がなかった?…俺も巴の事は信じてる、しかし何だかその言い草がどう見ても言い訳にしか聞こえない。
「ありがと、ただの召使い。」
「どういてましてー♪」
彼女に対してまだ気持ちが完全に断ち切っていないのは奴だけではないという訳か。
あんな悪夢ののような誘い電話巴なら断ろうと思えばキッパリ断れた筈だし。
「いやー、別荘なんて初めてだなー。」
「…アンタさぁー部活は良いの?」
そうだそうだ!こんな所で油打ってる場合じゃねぇ、さっさと帰れお邪魔虫!
「…今日はお休み、たまには息抜きしないと練習に支障が出るって顧問の先生が。」
「大会はいつ?」
あれ?
「確か夏合宿なかったっけ?大会に向けて。」
「あったけどほらもう僕ら。」
「あーそっかそっかもううちら三年だしね。」
「そうそう!受験だってあるし。」
「蓮はどこの大学行くの?ひょっとしてあの名」
「巴っ!!」
「っ隼人?」
もう耐えきれない俺は思わず声を出し、勢いよく椅子から立ち上がり。
「あっ、ちょっ!」
そしてぼーぜんと座る彼女の腕を掴み、強引に建物の隅へと追いやる。